ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

瀬尾まいこ/「強運の持ち主」/文藝春秋社刊

瀬尾まいこさんの「強運の持ち主」。

吉田幸子ことルイーズ吉田は、二階建ての小さなショッピングセンターの一角で
占い師を生業としている。ルイーズの元には毎日様々な人間がやって来る。
「お父さんかお母さんかどっちにすればいいか占って欲しい」小学生、「気を引きたい人に
振り向いてもらえるにはどうしたらいいのか占って欲しい」女子高生、「弟子にして欲しい」
大学生、アシスタント募集でやって来たシングルマザー。数字や星周りよりも直感で占う
ルイーズの占いは、いつも少しだけ誰かを幸せにする――4編からなる連作短編集。


またまた瀬尾まいこさんです。瀬尾さんの作品は、いつも読後感が良くて、読んだ後に
ほわっとした気分に包まれるのですが、本書は、私はなんかダメでした。面白くなかった
訳では決してないのですが、相変わらず主人公に入れ込めない。「最強運の持ち主」である
というだけで好きでもない男を彼氏にするというエピソードにも引いたし、その彼を手に
入れる為にいろんな手を使ったというのにも呆れたし。瀬尾さんって、主人公にいつも
嫌な性格を盛り込むんですよね。もちろん、そういう部分があるのが人間だし、ある意味
非常にリアリティがあると云えるのかもしれないけど、好感が持てるかという決して
持てるタイプではない。
それと、本書はややミステリ要素を盛り込んだ作品集と云えるのですが、そのミステリ部分
のオチが非常に中途半端。1話目の「お父さんとお母さん」の謎もすぐわかってしまったし、
3話目の「おしまい予言」のオチなんて、「なんだよ、それー」と思わず突っ込みたく
なっちゃう内容。ルイーズの‘おしまい’がそんなものだとは・・・っていうか、そんなの
‘おしまい’って言わないよーと思ってしまった。
あと、通彦の「最強運の持ち主」という設定がいまひとつ生かされてない点も不満の一つ。
結局数字などから算出した上の「最強運」なんて、何の足しにもならない、と言いたかったの
かもしれませんが、せっかくそういう設定を作ったのだから、ラストあたりで一つ大きい
何かをぶちかます、とかそういうエピソードが欲しかった。

かなり厳しい評価になってしまいましたが、きっと普通に瀬尾ファンが読んだら「ほのぼの
としたいい話」という感想が多いのではないかと思います。きっと‘好き’という人の
方が多いのではないでしょうか。
私自身があまり占いというものに縁がない人間だから余計に引いてしまったのかもしれません。
参考程度にするなら良いのだけれど、人生の大事な決断を占いで決めようというのにどうも
嫌悪感を覚えてしまう。もちろん、当たるも八卦、当たらぬも八卦、というのが本書のテーマ
なのでしょうけど、ラストの「強運の持ち主」ではルイーズ自身がかなり占いに振り回されて
いるので。なんか、通彦とルイーズの会話にも引いてしまったんです。空疎な印象で。通彦
は、私だったら到底好きになれないタイプだなぁ。アイデア料理は面白いですけどね(食べ
たくないものの方が多かったけど^^;)。

今回のツボキャラは強いて云えば武田君ですかね。でも‘おしまい’なんて宣言してもらいたく
ないなぁ、やっぱり(怖い)。

瀬尾作品は残りあと1作かな?ここ一年で一番作品数を読んでいる作家かもしれません。
書庫だって作れそうだ(笑)。残り1作も読みますよ~^^