ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東野圭吾/「たぶん最後の御挨拶」/文藝春秋刊

東野圭吾さんの「たぶん最後の御挨拶」。

容疑者Xの献身」で直木賞受賞、数々のヒット作を生み出した現代の大ベストセラー作家、
東野圭吾。しかし、受賞までの道のりは長く険しいものだった・・・。著者の生い立ちから
人気作家になるに至るまでの年譜を始め、自身による全著作解説、様々な雑誌に寄稿した
エッセイをまとめた、たぶん著者最後のエッセイ集。


実は友人が図書館から回って来たものを回してくれたので(本人読んでないのに)、
思いの他早く読めることになりました(私自身は予約すらしていなかった^^;)。
Mちゃんありがとう!

タイトルがどうも意味深だなぁと思っていたら、なんとそのまんまの意味だったんですね。
本人曰く、「エッセイを出すのはこれがたぶん最後」。そ、そんな~、これからも長い
作家人生、こんな所で最後なんて言い切ってしまっていいの~!?と思いましたが、
たぶん、がついてるから絶対最後とは言い切れないですよね。東野さんのエッセイは
なかなか面白いので、これで最後なんて言われるととても残念に思うのですが。
まぁ、東野さんのエッセイ、かなりの率で自虐ネタが多いので、そういう卑屈さをもう表に
出したくないと思われているのかもしれませんが。私は結構この自虐ネタが好きだったり
するんですけど。ちょっと読んでて気の毒に思いつつ、笑っちゃう、みたいな(苦笑)。
それにしても、現在のベストセラー東野圭吾が出来るまでは本当に長い道のりだったの
ですね。長い、落選人生。東野さんのエッセイには至るところにこの‘落選’の文字が
出てくる。それ程、賞レースからは見放されている作家だったということでしょう。
ここまで賞に拘る作家も珍しい気もするのですが。それとも、ある程度のレベルの作品が
書ける作家なら誰でも意識することなんでしょうか。私からすれば、それだけの賞に
ノミネートされるだけでも結構すごいことなんじゃないかと思うのですけど。ノミネートすら
されない作家がごまんといる訳ですし。でも、ノミネートされたらそりゃー受賞も期待
するだろうしなぁ・・・。

とにかくたたみかけるような自虐ネタ(本が売れない、ノミネートした賞に落選する、
自信作が書評家たちに無視される・・・etc)満載で、東野さんがいかに作家人生で
苦労しているかがとても良くわかるエッセイ集です。その部分を読んでいる限り、現在
のあのベストセラー作家の影は全くありません^^;こんなに卑屈にならんでも~と
思わないでもないけれど、そういう後ろ向きな東野さんがとても身近に感じられて、
なんとなく嬉しくなりました。こういう経験があるからこそ、今の素晴らしい作品が
書けるのでしょうね。東野さんが「賞は欲しい。でも賞の為の作品は書きたくない」と
きっぱり断言している所が素晴らしい。本はやっぱり読者の為に書かれるもの
だと思いますから。これからもグレードの高い作品を書き続けて行って欲しいです。

本書の全著作解説を読んでいて、まだまだ読んでいない作品がいっぱいあるなぁと思い
知らされました。特に中期辺りの作品はほとんど読んでない。「魔球」「宿命」「天空の蜂」
「変身」「分身」・・・それにしても、どれがどれだかわかんなくなるようなタイトル
ばっかだな~^^;東野作品全制覇目指して頑張らねば!
(一体いつになるんだ~・・・^^;)

東野さんの作家人生の全てがわかる貴重なエッセイ集です。東野ファンには是非読んで
頂きたい一冊です。