ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

都筑道夫/「ちみどろ砂絵 なめくじ長屋捕物さわぎ」/光文社時代小説文庫刊

都筑道夫さんの「ちみどろ砂絵 なめくじ長屋捕物さわぎ」。

真昼間に日本橋川の渡し舟から男が一人忽然と消えた。その男は本所無宿の人魂長次という
泥坊だった。両岸からは十手を持った岡っ引きがしっかりと見張っていた最中の出来事である。
この謎を聞きかじったのが馬喰町三丁目にある橋本町の裏長屋、非人たちが住む江戸指折りの
巣乱、通称 < なめくじ長屋 >に住むカッパである。カッパの話相手はこのなめくじ長屋の
砂絵師・通称センセー。長屋の大道芸人たちを手足に使い、センセーはこの難問をするどい
推理で解決に導いて行く――(「よろいの渡し」)。江戸を舞台に繰り広げられる本格短編
推理集、記念すべき第1作。


先日冴さんにやって頂いたルールバトンでお薦め頂いた本書。たまに行く図書館には
どうやらほぼ全巻揃っているようなので、ほっとしつつまずは第1作目から手に取ってみました。

さすがは冴さんがお薦めするだけあるっ!面白かった~!!時代ものは普段は苦手な
のですが、センセーを中心としたなめくじ長屋の面々がとても生き生きと描かれていて、
とても読みやすいし痛快でした。あとがきで高橋克彦さんも述べられていますが、当時の
江戸の情景や風俗の描写がとても巧みで、風情と情緒を感じられて良かったです。
センセーの人となりがまたとても魅力的。なめくじ長屋の面々から持ち込まれる難問を
するどい推理で解き明かし、事件に関わった悪人たちにそれとなくお灸をすえる。この
辺りは、京極さんの巷説シリーズに通ずるものがあるな、と思いながら読んでました。
特に「本所七不思議」は読んでいて巷説シリーズの「芝右衛門狸」を思い出しました。
もちろん書かれたのはこちらの方が先なので、あちらが本書に似ていると書くべきなのかも
しれませんが。
それぞれの話が端正な本格推理なのが何より嬉しい。好きなのは密室を扱った「三番倉」、
トリック、真相、雰囲気全て好みだった上記にあげた「本所~」、あとラストのセンセーと
犯人のやりとりが絶妙だった「いのしし屋敷」。
最後に収録されている「心中不忍池」の展開には驚きましたが・・・まさかレギュラー
キャラクターだと思っていたアノ人がああなるとは・・・正直この先もシリーズが
続くことを知っている身としては残念に思いましたが、都筑さんの中では始めからこの
展開を考えていたのでしょうか。

とにかく、なめくじ長屋の面々が協力し合って一つの事件を解決に導く様は読んでいて
非常に小気味が良い。それぞれのキャラクターにも好感が持てました。苦手な時代もの
でもこういうのならいくらでも読めそうです。こういうの大好き。続きを読むのが楽しみです。

冴さん、素敵な本をご紹介頂きありがとうございました!