ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

恩田陸/「朝日のようにさわやかに」/新潮社刊

恩田陸さんの「朝日のようにさわやかに」。

ホラー、ミステリ、SF、ショートショート・・・etc。著者が5年の間に発表した短編を
14作収録。バラエティに富んだ恩田陸珠玉の短編集。


恩田さんの最新作です。久しぶりの短編集。本当にいろんなジャンルを集めているのだけど、
どれも「ああ、恩田さんだなぁ」というものばかり。短編だけあり、正直記憶に残りそうな
話はあまりないです。さらっと読めてしまうので。もしこの作品から恩田さんを読まれる方
がいたら、‘何か掴みどころのない作家’という印象を与えてしまうかも・・・。私はこの
掴みどころのなさを愛しているのですけれどね。


ではそれぞれの感想を。

「水晶の夜、翡翠の朝」
これは雰囲気、キャラ、ストーリー、全てにおいて一番完成度が高いです。それもその筈、
理瀬シリーズです^^ただ、この作品、私は再読でした^^;;内容もばっちり覚えていたので、
収録されてる理瀬シリーズってこれかよ~と弱冠がっかりしました。でもやっぱり面白い。
本格ミステリというところが何よりいいですね。これに出てくるわらいカワセミの歌、職場で
良く童謡がかかるので知っていたのですが、これを読んでからは何か怖い歌、という印象が
インプットされてしまいました^^;のんきな歌なんですけどね。

「ご案内」
また束芋さんの絵を想像してしまいました。ブラックですねぇ。

「あなたと夜と音楽と」
これは二番目に好きですね。会話だけで物語が進行する、というスタイルできちんとミステリ
になっているところがさすが。

「冷凍みかん」
えー、なんで冷凍みかんが・・・!!という衝撃が味わえる作品です。冷凍みかんを○○と
結びつける、というのが面白いですねぇ。でもなんで冷凍みかん?

「赤い鞠」
赤い鞠と少女の思い出がなんともノスタルジックな郷愁を感じさせる作品。短いけど、こういう
余韻の残る短編は好きです。

「深夜の食欲」
ルームサービスを運ぶワゴンに意志を感じさせるところが面白い。爪と歯の使い方が何とも
不気味で怖い。「世にも奇妙な物語」なんかで映像化して欲しいですね。

「いいわけ」
これはよくわかんなかった。オチが。恩田さんの後解説には「モデルはいわずもがな」と
書いてあるのですが、全くわかりません^^;

「一千一秒殺人事件」
「これは星に殺された男のはなしです」・・・まぁ、その通りですが、正直「なんじゃ、この
オチはー!!」と思いましたです・・・ある意味Bミス?

「おはなしのつづき」
ラストはホラーになるのかと思ってたら、切ない話でした。ちょっとわかりにくいけど。

「邂逅について」
物語というより、詩という印象が強い。独特の世界観が非常に美しく、この話を元に
長編を書いて欲しい。やはり恩田さんの文章が好きだ。

「淋しいお城」
シュール。恩田さんがこういう話を書くとは思わなかったです。みどりおとこが怖いよ~^^;
それなのになぜか女言葉というギャップが笑える・・・と思ったら、ラストでちゃんとその意味が
明かされます。あとがき解説によると、恩田さんのミステリランドの予告編として書いたもの
だとか。こういうテイストになるのか~。うん、楽しみ。

「楽園を追われて」
これはなんだかな~。ラストのオチは‘いい話’なんだろうけど、恩田さんにはもっとひねった
展開を期待してしまうので、ちょっと肩透かしでしたねぇ。

「卒業」
これはこのページ数で書くのは無理があるのでは・・・0時で全員が16歳になるというのも
よくわからなかったなぁ。みんな同じ誕生日?・・・状況がよくわからないままにいきなり
すごい展開になって行くので、完全に読者は置いてきぼり状態です^^;

「朝日のようにさわやかに」
恩田さんにしては爽やかなタイトルで似つかわしくないなぁと思っていたら、有名なスタンダード
ナンバーからなんですね。どんな曲か知らないのですが^^;全く脈絡なさそうな話を延々と
続けておいて、ラストはそれが子供の頃の謎の解明と繋がって行くところが上手いです。


こうやって感想を書いてみると、やっぱり私はミステリ仕立ての作品が好きなんだなぁと
気付かされますね。恩田さんにはもっともっと本格テイストのミステリを書いて欲しい所です
(できればちゃんとすっきり謎が解けるやつを・・・^^;)。

非常に読みやすいので、あっという間に読めてしまいます。恩田さんのいろんなジャンルが
楽しめますよ。