奥田英朗さんの「ガール」。
広告代理店に勤める三十二歳の独身OL、滝川由紀子。ディスコに行って男にちやほや
されなくなった。化粧品のサンプルも回ってこなくなった。もう「ガール」と呼ばれる
歳ではないのだろうか――(「ガール」)。三十代のキャリアOLたちの奮闘を描いた
キュートな短編集。
出版広告が出た時から「この本読みたい!」と思い続けて早1年以上、ようやく手にすることが
出来た本書。図書館で予約するのを忘れていたら、あれよあれよと予約数がすごいことに
なっちゃったのでもう諦めて開架待ちだったのです。先日たまに行く地域図書館で見つけて
即借り。なんとその図書館、普通に開架に「図書館内乱」「図書館危機」も並んでいたの
ですねぇ。あらまぁ、なんと穴場な図書館なんでしょ(とりあえず懲りずに「内乱」借り
ました・・・石投げないで^^;)。
さて、待望の本書。そりゃ、もう、三十代で働く女性という立場の自分としては、なかなかに
ぐさぐさと突き刺さる言葉がちらほら。でもこの主人公たちと自分の違う所はキャリアOLか
そうでないか。私は普通の企業に勤めたことがないので、上司との軋轢とか、女性OL
同士の諍いとか、そういうのは経験してないので、「なるほど、一般企業というのはこういう
所なのか~」と興味深く読みました。でも、大多数の働く三十代女性はマンション購入なんて
考えられないし、もっともっと生活に窮してるんじゃないかなぁ。できれば‘キャリアウーマン’
に拘らずに、一般的な働く三十代女性の話も描いて欲しかったところ。ただ、三十路女の心の
叫びには実に共感できました。三十路過ぎたって気持ちは「ガール」でいたい。恋愛したいし、
お洒落したいし、楽しく生きたい。そういう「女の子」な気持ちはいくつになっても持って
いたいもの。きっとこれは男性にはわからない気持ちかもしれないなぁ。三十過ぎたオバサンが
何言ってんだよ!って言いたくなるのかもしれない。でも、女性ってそういうものです。いくつ
になっても綺麗って言われたら嬉しいし、素敵な男性が現れたら恋しちゃう。奥田さんは
どうしてこんなに女性心理が上手く描けるのでしょう。「Can Can」と「Classy」の年齢層の
違いなんて、男性じゃわからなそうなものだけど。
どの話も三十代女性ならではの壁にぶつかって、社会におけるこの年代の女性の風当たりの
強さみたいなものをひしひしと感じます。でも、最後にはその壁をぶち破って胸張って生きて
行こうとする主人公たちの前向きな姿勢にスカッとしました。独身でも既婚でも、バツイチで
子持ちでも、働く全ての女性にエールを贈るような清清しい小説でした。面白かった!
一番好きだったのはラストの「ひと回り」かなぁ。ひと回りも年下の男の子に年甲斐もなく
恋をして、右往左往する様がなんともむず痒くも共感できました。まぁ、私でも同じ立場
だったら行動に出る勇気はないなぁ・・・。相手もどん引きするだろうし。やはり二十代
と三十代の壁を感じるのはこういう時かもしれない。
‘負け犬女の遠吠え’などと思わずに、男性諸君よ、本書を読んで三十路の可愛い女性たちの
働く姿を応援したまえ!女性は女性で、大変なのだ!・・・と声を大にして叫びたくなり
ました。偉そうで、すいません。これこそ負け犬女の遠吠えか^^;