ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

蘇部健一/「六とん3」/講談社ノベルス刊

蘇部健一さんの「六とん3」。

バカミスから心暖まるファンタジーまで、『六とん』こと『六枚のとんかつ』シリーズの
最新作がついに登場。下品で収録が危ぶまれた「×××殺人事件」や、タイムマシンで過去へ
行き、片想いだった女性に告白する「秘めた想い」、運命の人との出逢いを描く「赤い糸」など、
ワクワクドキドキのお話がいっぱい(裏表紙より抜粋)。


ワクワクドキドキ・・・??裏表紙のあらすじが面白いのでまたまた横着して抜粋です
(だいたい、自分であらすじ考えられる作品じゃないし)。予定ではもうちょっと置いて
から読むつもりだったんですけど、ついつい一話だけ・・・と思って読み始めたらついつい
次も、じゃーまた次もー・・・よ、読んじゃったよ、全部^^;

まぁ、表紙からウケました。いや、表紙が一番ウケました・・・?純真無垢な少女が
古本屋で平積み(!!)になっている六とん3を前にお金(推定121円?)
を握り締め、思案している様子。
そして裏表紙ではめでたく購入した六とん3を実に楽しげに読んでいるいたけけな少女。
この年齢からトホミスなんて読んで大丈夫?と妙な老婆心が・・・。なんて可愛い表紙
なんでしょう。これは間違いなく表紙買いを狙っているような。この絵の方は有名な方
なんでしょうか。私は知らなかったけど、この絵につられて買う人は絶対いるはず。

さて肝心の中身ですが。くだらないのは前半に集中。後半は蘇部さんお得意の(!?)
タイムスリップシリーズ。ほうほう、これは≪想い≫シリーズというものだったのか!
でも三部作のうち、これだけラストが異色ですね。ただ、この結末がいまいちよくわからな
かった。ラストで突如登場した人は誰なんでしょう??「殺ったのは誰だ!?」も作中作
の連続で何が何だか。いまひとつオチもわからず・・・。私としては一番初めの「もう一つ
の証言」が一番好きかもしれない。半下石ものだし。オチがカラーだし(そこかよ!)。
×××殺人事件は・・・確かにこれは収録が危ぶまれても仕方ないな・・・。

でもどれも面白かったです。くだらなさ、という点はちょっと控えめだったような気も
しますが。オチが後味悪いものが多かった気がする。「瞳の中の殺人者」「死ぬ」「嘘と
真実」「秘めた想い」・・・。後味は悪いけど、こういうひねりがあった方が短編として
の落とし所はいいと思いました。ただ、私としては蘇部さんにはとにかくとことんくだらない
のを期待しているので、もっともっとバカでアホなトホミスを書いて欲しいです。

あとがきで、著者が「最近ネットで「あとがきはおもしろい」とか「あとがきだけはおもしろい」
という評をよく目にするので、かなりのプレッシャーである」
と書かれています・・・私の
ことかーッ!(笑)
でも今回のあとがきはちょっといつもの自虐さが少なめだった気が。自作解説なんかも入って
いるせいもあるけど。そういう意味ではカバー折り返しの一言の方が蘇部さんらしいと思い
ました。これからもこの限りない低姿勢を貫いて欲しいものです。