ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

鯨統一郎/「間暮警部の事件簿 マグレと都市伝説」/小学館文庫刊

鯨統一郎さんの「間暮警部の事件簿 マグレと都市伝説」。

元神奈川県警の敏腕刑事だった大川が所長を務める大川探偵事務所に勤めるぼく(小林)と
中瀬ひかる。ある日息子の雅也の死の真相をつきとめて欲しいという母親から依頼が来た。母親
が言うには、殺したのは嫁の佳乃だと言う。ぼくたちは早速調査を開始し、ようやく事件の
あらましが見えて来たと思った頃、あの男が歌いながら登場したのだった。その歌は、郷ひろみ
の「小さな体験」だった――事件を何でも「見立て殺人」に置き換えてしまうトンデモミステリ、
間暮警部シリーズ第二弾。


うひー。なんじゃこりゃ。く、く、く・・・くだらないー。ひー。このシリーズ、前作の
『「神田川」見立て殺人』は随分前に読んだ筈なんですが、こんなにくだらなかったっけ。
アホだったのは覚えてるんですが。いやぁ、読んでて思わず噴出した回数数知れず。
本書には7作の短編が収録されていますが、全ての話はほぼ一定のセオリーに基づいて筋立て
が成り立っています。事件の謎解きには必ず昭和を代表する一歌手の名曲メドレーが使われます。
というか、マグレが無理矢理全ての事件を歌謡曲メドレーの「見立て殺人」だとこじつけて
しまうのですが。まぁ、とにかくこれがくだらないんだけども、なんとなくちゃんと謎解きに
なってるんですね。それが鯨ミステリのすごいところで。事件に必ず付随してかつて世間を
騒がせた都市伝説が出てくるのですが、これもほとんど意味がないような・・・。

いやもう、とにかくマグレの言動の意味不明さといったら。語り手である小林君が絶妙の
タイミングでその言動に突っ込みを入れるところがツボでツボで。はー、お腹痛い。
一体なんなんだよ、この人!ってほんとに言いたくなりました(きっとほとんどの方が
小林君に共感しまくりのことでしょう)。
ここまでバカミス街道を突っ走ってくれる鯨さんが大好きです。
タイムスリップシリーズを読んでる人にとってはにやりとするシーンもいくつか。

一番好きなのは第5話の小泉今日子メドレー。お決まりの兄による推理のどんでん返し部分では
素直に感心してしまった(不覚^^;)。その分、次の6話の近藤真彦メドレーの出来がひど
かったけど・・・。5話と最終話の謎解きもややかぶり気味だったので、ちょっとネタ切れ
してきたのかなーと思いましたが(苦笑)。それに、ラストでのお兄さんの謎は一体・・・。
結局ブラックローレライって何なんだろ???(でもそこはきっと突っ込んじゃいけないに
違いない・・・)

まぁ、とにかくよくぞこんなくだらないことを考えつくものだと呆れ半分、感心半分。
以前にも書きましたが、この作家は思いつきの天才ですね。


ちなみに収録作は以下の通り。ある年代以上の方、懐かしいでしょう?きっと、中で出て
くるメドレーを一緒に歌いたくなる筈ですよ~。

第一話「マグレと郷ひろみと高速で走る老女」
第二話「マグレと太田裕美と白い糸」
第三話「マグレと高田みづえと死体洗いのバイト」
第四話「マグレと渡辺真知子人面犬
第五話「マグレと小泉今日子と膝が痛い」
第六話「マグレと近藤真彦口裂け女
第七話「マグレと中森明菜とディズニーランド」



「タイムスリップシリーズ」がお好きな方、くだらないBミスをお求めの方、あまり深く
物事を考えないで作品を楽しめる方にはオススメです。

ただし、真面目なミステリが読みたい方、見かけても見なかったフリをしましょう。