ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「しゃべれども しゃべれども」

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「しゃべれども しゃべれども」/監督:平山秀幸
               /出演:国分太一香里奈森永悠希松重豊 他


古典を愛する二つ目の落語家・今昔亭三つ葉。師匠・今昔亭小三文からはなかなか稽古を
つけてもらえず、思うように腕が上がらない。そんな三つ葉のもとに、「話し方を学びたい」
と三人の人物がやって来て、思いがけず話し方教室を開くことになってしまった。口下手で
無愛想な美人の十河、大阪弁が直らないせいでクラスに溶け込めない小学生の村林、毒舌
なのにスポーツ解説が苦手な元プロ野球選手の湯河原。しかし教室を開くごとに衝突する
三人。落語も教室も上手く行かず、想いを寄せていた女性にフラれ、つまずきっぱなしの
三つ葉。そんな時、師匠・小三文が演じる「火炎太鼓」を見て、次の一門会でこの噺に挑戦
する決意をする――。


雨が降る中、観て来ました。小さい映画館だったせいもあり、客席はほぼ満員。観客はやや
年齢層が高かったように感じました(落語が題材のせい?)。

原作は非常に端正で完成度が高いエンタメ作品なので、それをどこまで映像化できる
のかなと弱冠不安に思ってましたが、なかなか良い出来だと思いました。国分太一君演じる
三つ葉が実にいいですね。原作よりも性格は大人しいように感じましたが、不器用で
ぶっきらぼうな優しさが伝わって来て、温かい気持ちになりました。十河役の香里奈さん
も役のイメージに合っていたし、湯河原役の松重さんもいい味出してました。でも何より
良かったのは村林役の森永悠希君。彼の愛らしさはこの映画の中でピカ一でした。原作
でもいじめられてるとは思えない明るさと強さを持った彼の性格がとても好きでしたが、
その役柄を十二分に魅力的に演じ切ってました。特に十河との落語対決のシーンは良かった。
あんなに長い落語の台詞を覚えられるなんてすごいな~。記憶力のない私には考えられない^^;
実際、小学生の前で落語をやって笑いが取れるのかどうかわからないけど、村林少年の
大げさな身振りをつけた必死な噺は、笑いを誘う空気をたっぷり持ってました。

私はちゃんと寄席に落語を聞きに行ったことがないので、国分君が演じた落語がどれ位の
レベルなのかわかりません。おそらく、本物を知る人から見れば「あんなのは落語じゃない」
と思われるのかもしれない。でも、素人の目から見たら、国分君の「火炎太鼓」はとても
魅力的で面白かった。映画の冒頭で演じた落語とは明らかに違って、三つ葉が上達している
ように思えました。やはりそれは国分君の努力の賜物なんだと思います。正直、伊東四郎
「火炎太鼓」より魅力的に感じました。三つ葉の必死さが伝わって来たせいかも。

ただ、原作では話し方教室をやるきっかけとなる三つ葉の従弟の青年の役がまるまる削り
取られてしまっているため、教室を始める冒頭のシーンの説得力がどうも欠けてしまった
印象を受けました。確かに原作読んだ時も、生徒の中で彼だけが印象が薄い感じはしたのですが、
まさか存在自体を消されてしまうとは。なんて可哀想な^^;
あと、ラストでの十河と三つ葉の恋愛部分もちょっと唐突だったかな。映画だとなかなか双方の
心の動きがわからないから、原作通りにするとそうなっちゃうのかもしれないけど。香里奈さん
の浴衣姿は美しかったですねぇ。私も惚れそうになりました(オヤジ)。
三つ葉の母親役の八千草さんもさすがの存在感でしたね。こんなお母さんいいなぁ。


原作同様、観終わった後温かい気持ちになれる良作でした。またしても本物の落語を聞きに
行ってみたくなりました(毎回このオチ)。

でも、実は一番気になったのは私の隣の席に座ってた観客の女性が、ものすごいリアクション
大王だったこと・・・。笑えるシーンでは声を出して大笑い、ラストでは号泣。私的には
泣ける映画ではなかったんですが・・・彼女のツボがいまいちわからなかった^^;
映画製作側的には非常に有難い観客なんでしょうけどね(苦笑)。