ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

高田崇史/「毒草師」/幻冬舎刊

高田崇史さんの「毒草師」。

東京・墨田区の名家・鬼田山家の離れの部屋で、鬼田山家の後妻・久乃が、内側から鍵を
かけて閉じこもった後、忽然と姿を消してしまう事件が起きた。その部屋では、過去に何度も
鬼田山家の人間が同じ様に閉じこもっては、ある日突然姿を消すという出来事が起こっていた。
姿を消す人間は、必ず「一つ目の鬼を見た」という謎の言葉を告げて閉じこもっていた。医療関係の
書籍や雑誌を発行する出版社に勤務している西田真規は、上司の言いつけでこの事件を担当させ
られることになり、フリーの編集者・篠原朝美の協力の下、独自に事件を調べ始める。同時に、
西田の隣に住み自らを「毒草師」と称する御名形史紋に事件の話を語ると、奇妙なことばかり
言ってきて・・・。QEDシリーズのあの傲岸不遜な変人・御名形史紋が活躍する本格ミステリー。


あの謎の変人・御名形が活躍する!?と聞いて、期待半分不安半分でしたが、面白かった。
御名形が主役だとしたら、一体どうやって物語を動かすのだろう、と思っていましたが、語り手は
やっぱり違う人でした。これがまたえらい真っ当で真正直な好青年で良かった。彼のおかげで
御名形の変人ぶりも強調されたような気がしましたが^^;でも奇人変人と口では悪態をつき
ながらも、御名形の調合した怪しげな薬湯を言われたままに服用するあたり、非常に人が良い
です(苦笑)。朝美さんとの関係がどうなるのかなぁなんてちょっとドキドキしつつも読み
進んでいたら・・・彼の受難はやはり御名形と知り合ったことから始まっていたのか^^;
QEDシリーズのようにミステリ部分はつけたしというのではなく、こちらは歴史的考察部分が
つけたしで、主要部分は直球の本格ミステリ。あちらのシリーズで消化不良を起こして苦手な
だったという方も、こちらなら安心して読んで頂けると思います(と私が言っても説得力がない
のが悲しい所ですが^^;)。ただ、QEDシリーズで頻発する一つ目(タタラ)が当然のごとくに
重要な要素として出てくるし、在原業平の「伊勢物語」と「古今和歌集」との間の歌のリンク
など、QEDシリーズらしい薀蓄も開帳されます。私は素直に「ほ~」と感心できましたが、
シリーズを読みなれた方には「またか」という感想になる場合も^^;でも、今回はタタルさん
が出てないせいか、薀蓄もそんなにうるさい程(苦笑)ではありません。物語の重要なファクター
としてバランスよく挿入されているように感じました。
ただ、謎解きはやや物足りない感じもしました。ダイイングメッセージや「一つ目の鬼が出た」
というメッセージの謎もやや無理矢理な感じがして、感心できるところまではいかなかったかな。
でも、クライマックスでの御名形サイドと西田サイドの進め方など、構成の上手さで読ませて
くれました。高田さん、こういう直球の本格ミステリも書けるんじゃないか!←偉そう^^;
御名形の傲岸不遜な謎解きも面白かった。
でも一番面白かったのは、お人よしの西田青年と御名形の会話かも。全然噛み合ってないけど、
多分お互いに一緒にいて居心地がいいんじゃないのかな。きっと二人には‘縁’があるんで
しょうね。ラストシーンはこういう無愛想なキャラにはありがちだけれど、やっぱり余韻が
残って好きです。多分QEDシリーズでは絶対出てこない表情なんだろうし。
装丁も凝っていてとてもいい。


QEDシリーズの他のキャラは一切出て来ないので、これ一冊で単独作品として読めます。
文章も読みやすいし、キャラも良いので、高田さん入門に読んでみるのも良いかもしれません。
もちろん、QEDシリーズがお好きならばより楽しめる筈ですよ~。
御名形の意外な一面も見れます^^是非ともシリーズ化して欲しいなぁ。



※ chadさん、案の定お先に読了してしまいました^^;記事待ってますよ~^^v