ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

神永学/「心霊探偵八雲 ― SECRET FILES 絆」/文芸社刊

神永学さんの「心霊探偵八雲 ― SECRET FILES絆」。

死者の魂を見ることが出来る赤い左目を持つ少年、斉藤八雲。中学三年の八雲は、周りの
誰とも打ち解けず、心を閉ざしていた。担任の高岸明美はそんな彼のことが気がかりだった。
そんな中、夜の中学校で八雲の同級生が幽霊に取り憑かれる事件が起こる。八雲は絶望の果て
から立ち上がり、事件を解決に導くことができるのか――晴香と出会う前の八雲を描いた番外編。
八雲と後藤刑事の第二の事件も収録。


八雲の中学時代を描いた外伝。あとがきで神永さんは現在の八雲とのギャップに驚いたのでは
と書かれていますが、私は全然そうは思わなかったです。八雲の生い立ちと暗い過去を考えれば、
ああいう少年時代を過ごしていて当然だと思うので。だいたい、他人と関わりになりたくない
という人との付き合い方は現在でもあまり変わっていないし。確かに今よりももっととげとげ
しい雰囲気はありますが、なんだかんだで人から頼まれたことを断れない性格はこの頃から健在。
まだ赤ん坊の奈緒ちゃんのことを可愛がる姿がとても微笑ましかったです。
それにしても、今回一番びっくりしたのは、一心さんにこんなロマンスがあったということ!
ロマンスといっても本当に短い期間だった訳ですが。こんなに悲しい出来事を経験しているのに、
現在の一心さんからは全くそんな悲しみの気配がないので、こんな過去があるとは思いませんでした。
ラストの一心さんの懐の深さはすごい。やはり彼を叔父に持ったことで、八雲は本当に救われている
と思う。そうでなければ、彼の心の闇はもっともっと深く、その絶望から這い上がることなんか
できなかったと思います。もちろん晴香ちゃんの存在も大きいとは思うけど、一心さんが
いたからこそ奈緒ちゃんとも会えたわけだし、八雲の根っこの部分の優しい性格が培われたの
ではないかな。奈緒ちゃんの生い立ちも八雲との関係もわかってすっきりしました。
このシリーズのファンならば必読でしょう。

それにしても、顔色が青白く目の下にクマができてる中学生ってどうなんだ・・・。そのうえ
片眼が赤いのだから、そりゃー、みんな怖がるよな・・・八雲には悪いけど^^;
でも私は八雲が好きだから、中学生の八雲の粋がって精一杯背伸びしてるようなとこも
可愛く思えてしまいました。完全にキャラ萌え小説読み^^;;本屋での扱いの割に周りで
読んでる人があんまりいないのが悲しいですが、私はとにかくこれからも追い続けます^^