ミステリ読書録

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瀬尾まいこ/「ありがとう さようなら」/メディアファクトリー刊

瀬尾まいこさんの「ありがとう さようなら」。

著者が講師時代も含めて教師として赴任した中学での毎日を綴った温かいエピソード満載
のエッセイ集。


瀬尾さんのエッセイ集第二弾。図書館の新刊コーナーに置いてあり、思いのほか早く借りれ
ました。実は現在またしても上下二段組(600ページ強)の大作に取り掛かっていて、
しかもこれが相当重い話なので合間の息抜きに読んでみました。1時間位であっという間に
読み終わってしまいましたが^^;
気がついてみると、瀬尾作品何気に全部追いかけてるんですねぇ、私。すっかり新刊待ち作家に
なってしまったな(ちと寂しい)。

前回のエッセイでも思ったけれど、瀬尾さんが赴任する学校の生徒たちは奇跡的に良い子
ばかりで、これは本当に実話なのか!?といぶかしんでしまう程。世の中で若年層の犯罪
凶悪化が問題視されている中で、こんなに爽やかな生徒ばかりが集まる学校があるのか!
とびっくりします。みんな本当に爽やかで気持ちの良い少年少女ばかりなんだもの。地方
の学校はまだまだこんな素朴で優しい子どもたちばかりなのかなぁ。こういう子どもたちに
囲まれて教師が続けられるなら、そりゃ、瀬尾さんみたいに教師という職業が好きで好きで
たまらなくなるだろうな。残念ながら、そういう学校ばかりじゃないのが現実だと思うけど。
でも、先生と生徒の関係が希薄になっていく今、瀬尾さんと三年二組のような関係が
築けることは本当に素晴らしいことだと思う。もちろん、それは瀬尾さんが真剣に生徒たち
と向き合っているからというのが大きいのでしょうけど。これがもし小説の中で書かれた
ことだったら、きっとリアリティがないと思ったかもしれない。だって、今時「テストで
100点取るので結婚して下さい」と先生に頼む生徒がいたり、頑張る生徒を応援する
サプライズ部が陰で活動するクラスなんて、いかにも作り事めいた話ではないですか。
でも、これが全て実話だというのだからすごい。学校行事での一致団結ぶりが素晴らしい。
普通クラスに何人かは「面倒くさい」と乗り気でない生徒がいそうなものなのに。

どのエピソードも微笑ましくて素敵で、そんな学生時代をほとんど体験していない身としては
ちょっと羨ましい。特に「てる子さんの出産」には笑ってしまった。35個のてるてる坊主
を生徒の為に手作りしてあげる瀬尾さんもすごいけど、瀬尾さんの演技に乗ってあげるK先生
や、生徒たちはもっとすごい。なんて人間が出来ているんだ。まぁ、中には冷めた目で見て
いる生徒がいたかもしれないけど。それにしても、大きなてるてる坊主から小さいてるてる
坊主がたくさん出てくる(産まれる)所を想像すると可笑しい。なんて可愛い人なんだろう、
瀬尾さんって。自分の読者と出会うエピソードも好きだなー。

卒業式のシーンは少し切ないけれれど、瀬尾さんが心から彼らの門出を祝福し、嬉しく思って
いるのが伝わって来てじーんとしてしまいました。こういう出会いを繰り返して瀬尾さんは
どんどん素敵な先生になって行くのでしょうね。
第一弾同様、瀬尾さんらしくて、とても温かい気持ちになれる素敵なエッセイでした。