ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

はやみねかおる/「亡霊は夜歩く」/講談社青い鳥文庫刊

はやみねかおるさんの「亡霊は夜歩く」。

亜衣・真衣・美衣の三つ子姉妹が通う虹北学園の学園祭が近づいて来た。三姉妹もそれぞれの
部活やクラスの出し物の準備で大忙しだった。虹北学園には四つの伝説がある。「時計塔の鐘が
鳴ると、人が死ぬ」「夕暮れどきの大イチョウは人を喰う」「校庭の魔法円に人がふる」「幽霊坂
霧がかかると、亡霊がよみがえる」――そして、ある日、壊れているはずの時計塔の鐘が突然鳴り
響いた。犯人は『亡霊(ゴースト)』と名乗る人物。犯人の目的と正体は?自称‘名探偵’夢水
清志郎が事件の謎を解く。夢水シリーズ第二弾。


夢水シリーズ第二弾です。本当は例の本が終わり次第読もうと思っていたのですが、あちらは
まだまだ時間がかかりそうなので、合間に軽く読める作品をと思い手に取りました。読み始めたら
本当にあっという間に読み終わってしまった^^;
相変わらず良質のジュヴナイル。犯人は前作同様一目瞭然という感じなのだけど、犯行のトリック
はなかなか面白かった。実現可能かどうかはやや疑問ですが・・・^^;ただ、犯行動機は切ない
のだけれど、やや説得力に欠け唐突な感じがしてしまいました。

本書で出て来た校則によって生まれた過去の悲劇を思うと、校則が一体何の為にあるのか疑問に
感じます。学校側にとって生徒を統制するのに便利な規則を押し付けているだけで、生徒を縛り
つける単なる道具に過ぎないのではないか。かといって、何も規則がなければ学校は無法地帯と
化してしまう気もするし。とても難しい問題だと思います。今の時代は、学校には校則がある
ものという周知の事実がある。だからその存在について疑問に感じる生徒はあまりいないし、
それが当然のことだと思っている。でも、規則を遵守するにしても、抵抗するにしても、何故
そうするのか、を考えることが大事なのかな、と感じました。はやみねさんはきっと、何に
対しても無気力で無関心になってしまう生徒たちの心が一番心配なんだと思います。実際教師を
やってらっしゃる(今現在はわかりませんが^^;)はやみねさんが現場で常々感じてること
なのかもしれません。

今回は何といっても初登場のレーチ君と亜衣ちゃんのほのかなラブストーリーが楽しかった。
レーチ君のキャラいいじゃないか~。なかなか頭脳明晰のようだし、さりげなく紳士だし、
ポイント高いぞー!!亜衣ちゃんとはお似合いのカップルです。今後二人がどうなるのか、
楽しみが一つ増えました^^最後のダンスシーンなんて、もう、青春そのもの!にやにや
しちゃいましたよ。いいなぁ、青春(遠い目・・・)。

全体の構成がメニュー・前菜・主菜・デザートと、コース料理に見立てているところが
にくいですね。デザート部分は、はめられる標的となった亜衣ちゃんが気の毒になりましたが^^;
みんながめついなぁ(笑)。

はやみねさんの作品は、あっという間に読めるけれど、中にはきちんと問題提起もされていて少し
考えさせてくれるところが好きです。そういえば、夢水探偵については全く触れなかったな^^;
今回も相変わらずな推理方法で人を脱力させてくれました(苦笑)。推理途中で温泉行っちゃうし(笑)。
それでも、きちんと最後はみんなが幸せになれる解決を導き出す辺り、やっぱり彼は
名探偵ですね。