ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

山田正紀/「雨の恐竜」/理論社刊

山田正紀さんの「雨の恐竜」。

ヒトミは映画監督になるのが夢の中学二年生。ある日担任の飯島先生から、映画部顧問の
浅井先生が亡くなったと電話を受ける。現場には恐竜の足跡が残されていたという。犯人は
恐竜!?幼馴染のサヤカとアユミと供に事件に巻き込まれることに・・・ミステリYA!シリーズ。


うーむ。これはダメだった。最近の山田作品とはどうも相性が悪い。主人公は14歳の中学生
三人組で、確かに青春小説なのかもしれないけど、全く面白いと思えなかった。だいたい、
好感の持てる登場人物が一切出て来ない。幼馴染の三人三様ひねくれた人物ばかりで、彼女たちの
言動には全く共感できなかった。そもそも、主人公のヒトミが他人に対してイライラしてばかりいる
ので、全体通して‘嫌な空気’を感じる作品でした。サヤカやアユミのキャラクターも普通と違う
人物像を造りたかったのはわかるのだけど、それが成功しているとは言いがたい。アユミのキャラ
なんかはもうちょっと書き込めばいいキャラになりそうなんだけど、いまひとつ動かし方が足りず
大した印象のないキャラになってしまってるし。サヤカが突然綺麗になってしまう課程も唐突で、
全く意味がよくわからなかった。彼女たちの言動は唐突で理解できないものばかりでした。
途中出て来て中途半端に謎解きをする君音少年の存在も最後は放り出したままだし、全てがすっきり
しない印象。ミステリ部分も腑に落ちないままだし、サヤカたちが幼少時代に会ったという
‘恐竜’の存在の謎も曖昧にぼかしたまま。ミステリYA!シリーズだからジュヴナイル向けに
読みやすい文章ではあるのだけど、読んでも読んでも物語は進まないし、主人公たちには
嫌悪ばかり感じるし、イライラしっぱなし。よく読みきったなと思う。でも、読みきったという
満足感はなく、消化不良の後味の悪さばかりを感じる作品でした。

「恐竜が犯人かもしれない」という荒唐無稽な謎をどこまで現実的にするかがポイントの作品
だったと思うのだけど、そこに全く説得力がなかったように思う。もっと違う書き方をすれば
ロマン溢れる青春小説になったと思うんだけどなぁ。なんだか残念な作品でした。
まぁ、江神さんの後に読んだから余計にアラが目についちゃったんだよな。読んだ順番悪かった
かもしれない。ごめんね、山田さん。