ミステリ読書録

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浦賀和宏/「八木剛士 史上最大の事件」/講談社ノベルス刊

浦賀和宏さんの「八木剛士 史上最大の事件」。

不死身の〈〈力〉〉を宿す奇跡の男――八木剛士の心にくすぶり続けるのは、デタラメな世界へ
の激しい呪詛。学校では凄まじい虐めを受け、謎のスナイパーには命を狙われるという生き地獄
の中で、初めて手に入れた恋という名の青春!
唯一の救済者・松浦純菜への想いを募らせすぎた妄想は、ついに脳外へ……。
そして事態は急展開! 急旋回! 急降下!? 八木剛士に訪れた史上最大の事件とは!!
(カバー裏より抜粋)


すいません、またあらすじ引用です・・・だから考えるの無理だってば。
えー、前作の苦しみから早や半年。いい加減そろそろ読まないとまずいよなー。図書館本
読みきっちゃったしなー。待ってる人も約一名いるしなー・・・ということで、重い腰を上げ、
ようやく手にとりました、シリーズ4作目。

えーと、えーと、コレ、どうやって感想かけって?
読み始めてまず思ったのは「あれ、この間読んだのと同じ本じゃないよね?」ということ。
だって、八木君の妄想思考と虐め描写が前作とほとんど同じ。びっくりするのは、前巻の
ラストであそこまで爽やかに友情物語を演出したからには、少しは八木君もプラス思考に
なってるんじゃないかと思いきや、驚く程何の成長もしていないこと。永遠に続くかと思われる
自虐思考と、純菜への妄想で紙面が埋め尽くされていて、読んでるこっちもイライラ・・・。
虐め描写は更にエスカレートしていて、この学校にはまともな生徒と教師はいないのか!?
と呆れ果てました。先生までもが、虐める側の味方をするってのはどういうことなんだ?
虐めは、虐められる人間に問題があるんだという、理不尽な思考回路の人間ばかり。この
本読んだ商業高校の学生や教師たちから抗議が来るんじゃないかと心配になりましたよ^^;
まぁ、八木君は商業高校に限らず、どの学校に行ってたって同じ様に八木メェメェと
いじめられてたんでしょうけど。
自分が虐められる事実を「仕方ないこと」として受け入れている八木君の潔さは、普通の
いじめられる人間と比べるとある意味プラス思考のような気がします。普通は「なんで
自分がこんな目に遭わなきゃいけないんだ」と憤るところに、「自分のような不細工は
こうなって当然」だと考えてしまうんだもの。何か、彼の怒りの矛先は間違っているような
気がして仕方ない。顔が悪いから虐められて当然って、そんなのおかしいのに。

それにしても、読み始めて2/3位してもタイトルの「八木剛士最大の事件」とやらが全く
起きる気配がないので、一体どうなってるんだ!?といぶかしみつつ読んでいたのですが、
章タイトルが「十五秒前」になった辺りで非常~~~に嫌~~~な予感に捉われました。






え、「最大の事件」って・・・・・・







コレ?







なめとんのかーーーーー!!!!







脱力したことは云うまでもありません。




これ読む為に私は二百何十ページも八木剛士の自虐と妄想に付き合ったのか・・・。
いや、ある意味非常にこのシリーズらしい落とし所だと思うんですけどね。
そーですか。そうきましたか。もう、笑うしかなかったです・・・。

でも、実は前作よりもずっと読みやすかったんですよね。変なエロシーンもなかったし。
八木君の『力』についてもある程度取り上げてくれたんで、それなりに満足です(え!!!)。
八木君を憎む謎の女生徒の存在も気になるし、次も読もう!という気力は湧きましたよ。
ええ、まじです。自分でもびっくりです。
なんだかんだ云って、‘好き好きベイビー’に拘る八木君の妄想にウケてる自分がいるんだもん。

でも、自虐と妄想と虐めのシーンを削って、最大の事件に焦点をしぼったら、この本、
1/3のページで事足りる気がするな(苦笑)。