米澤穂信さんの「愚者のエンドロール」。
八月下旬、夏休みも残り一週間と迫ったある日、古典部メンバーたちは文化祭に
出品する文集『氷菓』の編集会議の為、学校に集まっていた。そんな中、千反田
えるが一年先輩の入須冬実を連れて来た。入須は、古典部の部員たちに、文化祭
に出展するクラス製作の自主映画のビデオテープを見て欲しいと言う。内容は
謎解き部分を書く直前に脚本家が病気にかかり、未完成になってしまったミステリー。鍵のかかった密室で、片腕を切り落とされた少年が殺された。犯人は誰か?
犯行方法は?入須は、この続きを推理して欲しいと古典部に依頼する。奉太郎
たちは真相解明に乗り出した――ほろ苦い青春ミステリ第二弾。
随分前に購入していたものの、前作の出来に不満があってなんとなく手が出ずに
いた本書。先日新作が出たということで、新作を借りる為にも、とりあえず読んで
おこうと積読棚から引っ張り出しました。
結論から云えば、前作よりは楽しめました。ただ、最後を読むまでは、実は印象は
ほとんど変わらなかった。基本設定のある部分にあまりにも説得力が感じられない
ことに引っかかっていて、もやもやしたまま読んでいたのですが、今回はそれが
いい方に流れて行ったので良かった。
引っかかっていた部分が意図していたことで、きちんと説明がつけられていたので。
他にもいくつか気になる描写はあったのですが、それもラストへの伏線だったので
ミステリとしては前作よりもずっと面白かった。
奉太郎の謎解きに関して、「これってどっかで読んだよなぁ」と思っていたら、
あとがきである作家のある作品が挙げられていて、「あー、やっぱり」と思いました(「毒入りチョコレート事件」ではありません)。これが真相だったら多分評価は
前作と同じだったでしょうね^^;
今回、可哀想だったのは奉太郎。せっかく省エネ精神から脱却して意気揚々と(!?)
謎解きを開帳したのに、あの仕打ちは・・・。なんだか気の毒になってしまいました。結局彼はどこまで行ってもタロットカードの‘力’の意味するところそのままの人生を
歩むのか・・・と彼の未来までも心配になってしまいました^^;きっと千反田さん
と出会ってしまったことが彼の運命を狂わせたのではないかと(笑)。
最後のメールを読むと、入須先輩はアノ人と繋がってるってことですよね。という
ことは、そもそもの奉太郎の受難はやはりアノ人からなのかー。やっぱり‘力’だな、
彼は(苦笑)。
これで心おきなく新作を読むことが出来ます。といっても、まだ図書館未入荷なんで
いつ読めるかはさっぱりわかりませんが。それにしても、このシリーズはこれから
単行本形式で続いて行くのでしょうか。文庫の方が読みやすいのにな~。シリーズ
もので出版形式を変えられちゃうと読者は混乱すると思うんだけどな・・・。
いや、シリーズものだと知らずに三作目から読んじゃった人間のたわごとですけどね・・・。