ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

平山夢明/「ミサイルマン」/光文社刊

平山夢明さんの「ミサイルマン」。

テレクラで知り合った女たちを殺し、皮を剥ぐ快楽殺人者たちに降りかかった出来事とは?
表題作「ミサイルマン」を始め、残酷と猟奇と狂気に彩られた短編7編を収録。異形の話題作
「独白するユニバーサル横メルカトル」に続く、著者の第二短編集。


また読んでしまった・・・。前作同様、エグい、グロい、後味悪い、気色悪い。相変わらずの
平山ワールドでした。またしても、読んでいて何度吐きそうになったことか・・・それなのに、
何故ページを捲る手が止められないのだろう。はっきり云って、意味不明の話も多い。それなのに、
その世界を受け入れている(あまり認めたくないのだけれど^^;)自分がいる。何故だろう。
この壊れた世界に入り込めてしまう自分はやっぱり壊れているということ?


・・・と、そんなぐるぐる感に捉われてしまう平山夢明の世界。嫌悪感しか覚えない描写の
連続なのに、やっぱり物語に魅せられてしまいました。それぞれの作品のインパクトとしては
前作の完成度に及ばないものの、流れは同じ。口が裂けても「好き」とは云いたくないのに、
「読みたい」と思わされてしまうこの筆致はなんなんだ。どうしようもなくナンセンスな話
や残酷な描写に顔を背けたくなるのに、「それで、次はどうなるの?」と思わされてしまう
手腕はやはり著者の才能なんだろうと思う。
この才能は唯一無二だとしか云い様がない。でも、間違っても「お薦めです」とはいえない
作品であることは確かです。話題になっているからと手を出すと、酷い目に遭う可能性
がありますので、ご注意を。

今回はダントツでよかった作品、というのは特になかったです。ダントツにダメだったのは
「Necsucker Blues」。最高級の血液のレシピがね・・・ほんとにその部分読んでる時は眩暈
がして倒れそうでした・・・。そして、この作品のオチの意味がさっぱりわからなかったの
ですが。○○亭の意味が。誰か教えてくれー^^;;
意味がわからないという点では冒頭の「テロルの創世」も何が何やらでした。世界観は好き
なのですが、もうちょっとわかりやすい話にしてくれないと読者は置いてきぼりです(え、
私だけ!?^^;)。
一番好きなのは「けだもの」かな。狼男もの。ストーリー性があってわかりやすいし、親子の絆、
夫婦の絆を感じられるところがいい(おお、普通の作品の感想みたいだ!笑)。
童話の世界のようなソフトな語り口なのに、内容がそれを裏切っている「或る彼岸の接近」
のような作品も好きでした。「独白する~」もその手法でしたっけ。


そういえば、先日行った日本推理作家協会のイベントのクイズ大会での平山さん問題。この
ミサイルマン」の表紙の絵を描いたイラストレーターは誰?という問題が出たのですが、
残っていた解答者全員が全滅したという・・・(三択なのに!)。
ちなみに正解は・・・ズジスワフ・ベクシンスキー・・・わかるかーッ!!(笑)


なんだかんだいって、お気に入りの作家になっちゃいそうなとこが怖い・・・。だって、新作の
「他人事」もめちゃくちゃ楽しみにしている自分がいるんだもん(装丁めちゃ好みだし)^^;
さぁ、みなさんも異色の平山ワールドへ足を踏み入れましょう。


・・・・嘘です(笑)。