ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

加藤実秋/「モップガール」/小学館刊

加藤実秋さんの「モップガール」。

「高級優遇、初心者大歓迎」の文字に惹かれて、フリーターの桃子がアルバイトの面接に
訪れたのは『(有)クリーニングサービス宝船』。あっさり面接に通ったものの、社員は
変人ばかり、しかも請け負う仕事は事件・事故現場の後処理ばかりが舞い込むいわくありげな
清掃会社だった。働き始めてしばらくして、桃子は物心ついた頃から患っている難聴の症状が
現れていた。そんな時に殺人事件の後処理の仕事が舞い込んだ。仕事をこなしている途中、桃子
の頭に奇妙なフラッシュバックが起こり始めた。見た事もない景色が頭の中に現れ続けるのだ。
同僚の翔は、それが殺人事件と関係があるのではないかと言う。二人は事件について調べ始め
た――テレビ朝日系ドラマの映像化用原作を単行本化。


ミステリフロンティアから刊行された「インディゴの夜」でブレイクした加藤さんによる、現在
テレビ朝日金曜ナイトドラマで放映している同タイトルのドラマの原案本。観よう観ようと
思いつつ、未だにきちんとドラマの方は観たことがないので、そちらとの比較はできないの
ですが、どうやらドラマと原作はかなり設定が違っているようです。

主人公桃子がクリーニングサービス宝船に就職する経緯はやや安易な印象を受けたものの、
それぞれのキャラがしっかり創られていてなかなか楽しく読みました。22歳の桃子が時代劇
フェチで、おやじキャラなのも面白いし、社長が無類の犬好きで、『大』という字を見るとつい
点をつけて『犬』にしてしまうとか、背の低い横内警部補がシークレットシューズを履いてる
とことか、細かいエピソードにくすりとできました。
なるほど、テレ朝のあの枠のドラマらしい『くすぐり』が随所に感じられる作品だなという感じ。
ただ、その辺りの細かい設定がドラマにどの程度生かされているのかはわかりませんが・・・。
(というより、全く生かされていない可能性が高そうです・・・勿体ない^^;)

ストーリー自体はあまりひねったところはありませんが、物語よりはキャラとディテールを
楽しむ作品という感じなので、これはこれでアリかな、と思います。後半に行くにつれて
いわくありげな翔の過去の事件へと繋がって行くので、その辺りはなかなか読み応えも
ありました。

個人的にはイラストレーターの如庵のキャラが好きでした。外国人なのに時代劇フェチという
ギャップが面白い。如庵から寛永通宝もらって喜ぶ桃子のキャラもすごいですが(笑)。
その寛永通宝がきちんと後で役に立つあたりもニクイ。桃子が寛永通宝を投げるシーンは
小気味が良くてなかなかに痛快でした。
それにしても、桃子が入り浸っている『五郎八』、時代劇ファンにはたまらない場所なんで
しょうね。オタクな会話についつい笑ってしまいました(笑)。

ラストは非常に意味深。これで終わりはないよな~^^;是非続きを書いてもらいたい。
ipodのことがあるから、彼はきっとまた戻って来るでしょうけどね。


気軽に楽しめるエンターテイメントな一冊。時代劇ファンにも是非お薦めしたい作品です^^