ミステリ読書録

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西澤保彦/「念力密室! 神麻嗣子の超能力事件簿」/講談社文庫刊

西澤保彦さんの「念力密室! 神麻嗣子の超能力事件簿」。

売れない作家・保科匡緒がある日自宅のマンションに戻ってみると、中から施錠され、チェーンが
掛けられていた。誰かが中に潜んでいると考えた保科は警察に通報。隣の部屋の住人に協力を要請
し、部屋に入ってみると、中には見知らぬ若い男が死体となって横たわっていた。事件を捜査する
美貌の能解警部にドギマギしていた保科だったが、更にそこに現れたのは袴姿におさげ髪の超が
つく美少女・神麻嗣子。彼女は超能力者問題秘密対策委員会略してチョーモンインの出張相談員・
(見習)で、保科の部屋で超能力が使われた形跡があり、その使い主である保科を‘補導’しに
来たのだというのだが――(「念力密室!」)。保科と美女二人の出会いを描いた表題作他、5
作を収録した短編集。


チョーモンインシリーズ三作目です。忘れていたわけではないのだけれど、このシリーズは
あまり立て続けに読むと頭がショートしてしまいそうなので、適度に間を空けたいと思って
います。しかし、体調不良の時に読むべき作品でもなかった・・・。風邪でぼーっとしている頭
の中に超能力が絡んだロジックが全く入って来ない。何度もページを行ったり来たりしてしまった^^;

そんな状態で読んだ為、なんだか前回よりも楽しめなかった。どの話も密室に関わった超能力者が
みんな施錠する部分にだけサイキックを使うという設定自体になんとなく疑問を感じてしまった。
だって、超能力を持ってるんだったら、現場を密室にするだけじゃなくてもっといろんなことに
その力が使えるんじゃないか?どの話の超能力者も、ただ鍵をかけることにだけ超能力を使って
去っているというのが解せない。まぁ、その辺を突っ込んではいけない主旨の作品なのはわかる
んですが・・・。ドアの施錠にしか超能力が使われないから、神麻さんがチョーモンインだという
設定もあまり生かされていなかった気がするし。
ただ、密室を構成した理由や殺人における課程のロジックはやはり面白い。施錠は超能力に
よるものという、いわばアンフェアな設定なのに、そこ以外はきちんとフェアなミステリに
なっているのはさすが。

ただねぇ。私はやっぱり神麻さんを始め、主要三人のキャラの関係に納得がいかない。前作
「実況中死」で、これは三人の出会いを描いた作品を読んでいないからか?と思ったのですが、
他の方からもご教示いただいていた通り、出会いを読んで謎は更に深まってしまいました。
だって、「念力密室!」の保科と能解警部、保科と神麻さんそれぞれの出会いを読んでも、
何故保科が二人から気に入られるのかが全くわからない。どちらかといえば、第一印象は
最悪という出会い方に近いし。それに、保科のどこが二人の気に入ったのかという描写が全く
出て来ない。保科自身の描写にも人に好かれる要素があるように感じないのですが。いかにも
うだつのあがらない独身やもめという。一つあげるとすれば、密室の謎を解き明かすくらい
ですが・・・あれ、そこだったのか!?それとも、なんとなく癒し系、という所なのかなぁ。
私にはいまいち保科が癒し系だとは思えないのだけど。

そして、神麻さん萌えの方には非常に申し訳ないのですが、神麻さん自身も私はやっぱり好きに
なれないんですよね・・・。
なんだか読む度彼女の言動にはいらいらさせられてしまう。多分身近にいたら「あーもー、あっち
行ってて!!」って言いたくなっちゃうかも・・・能解警部が、ほっぺたつねくりたくなった
気持ちがよくわかる。短編だと彼女の活躍も少なかったですし。今回あんまりいいところが
なかったような。

ただ、今回ラストに収録された「念力密室F」は非常に意味深な作品ですね。もし神麻さんが
聡子が夢に見た少女と同じなのだとしたら、神麻さんが保科と能解警部をやたらとくっつけ
たがったことや、保科や能解警部が神麻さんに対して抱く複雑な感情なんかの説明が全てつけ
られるのかもしれない。ただ、それが真実だとしたら、悲しい現実が待ち受けている
訳ですが・・・でも、解説で引用されている作者の言葉を信じれば、このシリーズのラスト
には明るい未来が待っていると思って良さそうですが。

まぁ、シリーズが終わるのなんてまだまだ先の話だろうし、私はとりあえず残りの作品を
読み進めていかねば。またしばらく時間を置いて、次に進みたいと思います。