ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

桂望実/「女たちの内戦(セルフウォーズ)」/朝日新聞社刊

桂望実さんの「女たちの内戦(セルフウォーズ)」。

29歳、結婚に焦り合コンにあけくれるOLの真樹。34歳、平凡な家庭生活に安堵を覚えつつ、
何かやりたい仕事を見つけたい専業主婦の佳乃。39歳、年下の彼氏に結婚をほのめかされつつ、
仕事を取ってしまうキャリアウーマンのめぐみ。45歳、念願の自分の店を持つことができた
ものの経営が立ち行かなくなったバツイチのブティック経営者、治子。舞子が一人で営む足ツボ
マッサージに通ってくる年代の違う4人の女たちの心の葛藤を描いた連作集。


桂さん新刊です。「オチケン!」同様、新しい中央の開架にひょっこり置いてあってびっくり。
新刊が出たことさえ知らなかったのに^^;

今回は年代や立場の違う4人の女性が主人公。今までの桂さんの作品の主人公は、最初は嫌な
性格であっても、物語を通して成長するにつれて好感が持てて行けたのですが、今回の4人の女性
たちには正直一人も物語の最後まで好感が持てなかったです。読む側の年齢や立場によって
この作品の印象は大きく左右されるかもしれないです。多分私が一番近い立場は独身の真樹
なんだろうけど、彼女の「出会う男性全てを結婚の対象にする」目線が痛くて仕方なかった。
ただ、全く共感が出来なかったかというとそうではないところがまた痛い。なんだか自分が
こうなりたくないなぁっていう行動をことごとく彼女がするものだから、嫌悪を感じつつも
身につまされてしまった。きっと男性から見たらものすごく引いてしまうタイプなんだと
思う。彼女は「なぜこんなにイケてる自分が結婚できないんだろう」と自問自答しますが、
そういう「自分大好き」な所が男性から敬遠される最大の理由だろうに、それに気付いていない。
なんだか読んでいて歯がゆくて仕方なかったです。私が男だったら絶対真樹みたいな女性とは
結婚したくないだろうなぁ・・・。

多分自分が主婦だったら佳乃に共感するんだろうし、このまま結婚しないで仕事を続けたら
めぐみに共感するだろうし、バツイチになったら治子の気持ちがわかるのかもしれない。
いろんな立場の女性を登場させたところは上手いと思うのだけど、それぞれ自分のことしか
考えていない主人公たちだから「うん、わかるわかる」っていう読み方はできなかったです。
むしろ「なんでそう考えるの?」と思うことの方が多かった。セルフウォーズということは
自己との戦いという意味なんでしょうけど、自己と戦って何かが変わったというよりは、
現状維持のままでいいやみたいな、消化不良な終わり方が多かったですし。
ぐじぐじとした女性の嫌な部分を見せつけられて終わっちゃった印象で、読後があまり
いいとは言えなかった。この手の女性たちが主人公の作品だったら奥田さんの「ガール」
や、柴田さんの「ワーキングガールウォーズ」の方が読後も良くてずっと面白かったな。

それに、せっかく全ての女性が足裏マッサージの舞子の店で繋がっているのだから、舞子の
キャラをもっと動かした方が面白い話になったと思う。舞子が真樹にあげるペンダント
にしても、やや扱いが中途半端。全ての話に登場させる共通のアイテムにすれば連作集と
して読ませる作品にできたかもしれないのに。各話が少しづつリンクしている形になって
いるのは面白いと思ったので、もう一ひねり欲しかったです。

とても読みやすいし、さくさく進むのはいつもの桂作品と一緒なのですが、何かもう一歩
という感じでした。女性には読みやすいと思うけど、男性が読んだらどう感じるんだろうか。
登場する男性にもいい所がほとんどないので、男性読者にも共感が得られない気もしますが^^;
唯一めぐみの年下の彼、和徳は、めぐみには勿体なさすぎる‘出来た彼氏’だと思いましたが。
それを‘うっとうしい’と切り捨てるめぐみはある意味すごい女かも・・・。めぐみみたいな
キャリアウーマンになるには、いろんなことを捨てなきゃいけないのかもしれないな。