ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

小川勝己/「この指とまれ GONBEN」/実業之日本社刊

小川勝己さんの「この指とまれ GONBEN」。

美貌の女子大生・椙浦夏子は、稼いだバイト代全てを貢いだ恋人を、社長令嬢・日ノ原麗華に
奪われた。「お金持ちになって、あのふたりを見返してやる!」と誓う夏子は、大学の同級生で
体育会スキー部に所属する鹿沼歩、父親が会社で不正を働いて逮捕されたスキー部の後輩・吉田博貴、
夏子がバイト先のキャバクラで知り合った長谷川夏樹らを仲間に加え、詐欺グループを結成する。
学生サークルのノリでカモを騙す計画を練る彼女たち。数多のビジネスの成功に味をしめ、より
大物をターゲットに定めるうちに、いつしかヤクザや警察を敵にまわすことになって……。
最凶の知能犯たちが罠を仕掛け合う、ノンストップの札束争奪戦を迫力満点で描いた、鬼才の
傑作青春クライムサスペンス! (Amazonより抜粋)。


すいません、ちょっと疲れているのであらすじ引用です^^;12月に入ってやたらに仕事が
忙しく、今まで空き時間にのんびり本を読んでいた時間がほとんどとれなくなってしまい、
やたらに時間がかかってしまいました^^;みんな年内に歯を治しておかなきゃ!とか思う
のかなぁ。勘弁してくれ~^^;自分の分身が欲しいです・・・。

ああ、愚痴っぽくなってしまった。すいません^^;ええと、返却期限が明日までなので
とにかく今日中に読まなければならず(次に予約の人がいるので延長不可)、
仕事から帰ってさっきまでぶっ通しで読んでました。なんとか読み終わって良かった良かった^^;

いや~、疲れた精神にきましたね。久しぶりに小川さんのノワール全開小説だ。今までの作品
よりも抑えめと聞いていたけど、私には十分黒かったよ~~^^;;
夏子や夏樹たちの詐欺グループには読んでいて嫌悪しか感じなかったです。でも、これだけ
世の中でさまざまな詐欺が横行しているのは、彼らのように人を騙して自分だけ甘い汁を吸おうと
いう最低の人間たちが溢れているからなんでしょうね。仲間どころか自分さえ信用できない
悪人たちの人間関係には空恐ろしいものを感じました。仲間だと思っていた人物でも、結局
最後は裏切られていたことがわかるという・・・。凶悪で醜悪な狸の化かし合い。
怖い。怖すぎる・・・。特に、最後を読むまでは夏子の人間性を一番疑ってました。こんな
女子大生がいたらと思うと・・・。でも、実は一番怖かったのは彼女ではなく、もっと真性の
悪人がいたのですが。最後の最後まで小川流だなぁと思いました。この後味の悪さが‘らしい’
ですねぇ。

詐欺の手口なんかも詳しく書かれているので、巷で話題になっている詐欺犯罪の裏にはこういう
からくりがあったのか~と勉強になりました。ワンクリック詐欺の実情とか。私のPCや携帯
にも身に覚えのないサイトの請求が来たことがあるので、本当に詐欺というのは自分の日常
にも入り込んで来て身近であることを実感します。だから、いつ自分が騙されてもおかしくない
わけで、そういう知識は絶対にあった方がいいなと思いました。絶対身に覚えがなくても、
脅迫めいたメールを送られるのはやっぱり怖くて、「払わなきゃいけないのかな」という気持ちに
なりかけましたもの。いや、もちろん無視しましたけどね。とにかく、詐欺の手口は巧妙なので
騙されないようにしっかりしなくては。でも友達や先輩だと思って信用していた人が、夏子や
歩のように詐欺を働いていたとしたら、人間が信じられなくなるだろうなぁ。

詐欺師やヤクザたちが騙し、騙され、殺し、殺され・・・と次から次へと気が滅入るような
展開が繰り返されます。嫌~~な気分になるけれど、ページを捲る手は止められなかったです。
面白かった。

唯一の救いは、夏樹と俊明少年のくだりかな。実は俊明も最後の最後までどちらに転ぶのか
疑心暗鬼で読んでいたのだけれど、彼は本当に純粋な良い子だったのでほっとしました。
夏樹のことでは暗い陰を負うことになってしまったので、彼のこれからが心配ではありますが。
夏樹に関しては基本的には救いようのない人間なのに、たまに良い所もあったりして、なんだか
好感を持っていいのか悪いのかよくわからなかった。でも、あのラストは切なくなりましたね。

基本的には因果応報という結末なので、悪いことをするとそれだけ自分に跳ね返って
くるんだよ、というメッセージのようにも感じました。ラストで化けの皮がはがれる人物に
関しては、一体今後どういう人生を送るのかさっぱり見当もつきません・・・。
吉田君にはその辺、頑張ってもらいたいですね。彼も結局巻き込まれたとはいえ犯罪の片棒を
かついでしまったのだから、もう真っ当な人生は歩めないでしょうからね。もしかしたら、
共倒れになるのかもしれませんが。とにかく、一矢報いて欲しいところです。そうでないと、
浮かばれない人が多すぎます・・・。


読んでて気分が悪くなる作品ばかりなのに、なぜか次も読みたくなる。小川勝己
ノワールな世界に浸りたくなる自分がいる。なんとも不思議な作家です。