ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

近藤史恵/「タルト・タタンの夢」/東京創元社刊

近藤史恵さんの「タルト・タタンの夢」。

カウンター7席、テーブル5つの下町の商店街の片隅にあるフレンチレストラン『ビストロ・
パ・マル』。絶品料理を作るシェフ・三舟は、客たちの不思議な事件を鮮やかに解き明かす
名探偵でもあった――極上の料理と謎解きが味わえる7編の短編集。創元クライム・クラブ。


これは絶対自分好みだろうと思って読むのを楽しみにしていた作品です。近藤さんだし、
美味しいお料理に謎解きがプラスされると聞いたらそりゃ、期待もします。そして、期待
通り、めちゃくちゃ好みの一冊でした。何といっても料理が本当に美味しそう!!フレンチは
私も安いランチとかで良く行くし(千~せいぜい三千円程度の所ですよ)、フランスには何度か
行ったことがあるので、出て来るお料理は食べたことがなくてもイメージできるものが多かった
です。読めば読む程お腹が空いて来てしまい、美味しそうな料理にくらくらしました(笑)。
なんだか掴めない三舟のキャラですが、私はとても好きです。料理人って、彼のように偏屈な
人が多そうだし、自分なりの拘りがあるからこそ美味しい料理が作れると思うので。さらりと
謎解きをしてしまうのも格好いい。自分のお店に「パ・マル(Pas mal=悪くない、まぁまぁ)」
なんて名前をつけてしまうところも気取ってなくていいなと思うし。敷居の高いフレンチとは
違う庶民的なビストロならではの名前だなと思う。私も気軽に行ける家庭的なフランスの
ビストロの雰囲気は大好きなのです。

それぞれの謎自体はいかにも日常の謎的なささいなもの。でも、三舟シェフの謎解きを
読んだ後には、じんわりと胸が温かくなり、優しい気持ちになれる作品ばかりでした。
自分の街の商店街にもこんなお店があったらいいのに・・・!!ああ、三舟さんの作る
お料理が食べたい。香菜里屋とはお別れしたけれど、また新たに美味しいお店を発見した
気分で嬉しくなりました。また続編書いて欲しいなぁ。もっともっと三舟さんのいろんな
お料理で読者を幸福感に満たして欲しい。

懐かしかったのは「ガレット・デ・ロワ」。読んでて、学生時代フランスに旅行した時、
パリのパン屋さんで買ったガレット・デ・ロワの一切れの中に小さなマリア様の陶器の人形
(この作品でこれが‘フェーブという名前だと知りました)が入っていたことを思い出し
ました。‘当たり’を引いた気分で、なんだかとっても嬉しかったなぁ。未だに実家の
自分の机の上に飾ってあります。







以下ネタばれ注意です。






ただ、一つ気になったのは「タルト・タタンの夢」に出て来た卵の殻を入れて食中毒
を起こそうとしたこと。生卵の殻入れただけでお腹って壊れるものなのかな?ちょこっと
殻が入るとかは卵焼き作る時しょっ中なんですが・・・そんなにサルモネラ菌うようよ
なんだ・・・き、気をつけよう~~^^;;





薄いし読みやすいのであっという間に読めてしまいましたが、三舟さんの極上のお料理と
優しい謎解きでお腹いっぱいです。こういう作品大好きです!ああ、幸せ気分^^