ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

黒田研二/「ナナフシの恋」/講談社ノベルス刊

黒田研二さんの「ナナフシの恋」。

自殺を図り、意識不明の重態で病院に入院しているクラスメイトの麻帆。唯一の友人である沙耶
の携帯に、彼女の名前で「明日私たちの新しい教室で待っています」というメールが送られてくる。
翌日、呼び出しの通り教室で待っていると、同じように彼女からのメールで呼び出されたクラスメイト
たちが集まってきた。集まった6人の男女は、全て麻帆とアドレスのやりとりをしていた人物
だった。クラスで全く存在感のなかった麻帆。透明人間のようだった彼女は一体何を考えて
いたのか。彼女の自殺未遂の現場には不審な謎が残されていた。集まった6人たちは、彼女に
ついて語り合う。やがて見えて来た真相とは――。


クロケン応援団ではありませんが、黒田さんは私も以前から追いかけている作家の一人。
早速私も新作を読んでみました。

・・・が。ううむ。なんだろな、この結末は。これはちょっとあまりにも・・・。そりゃー
なしだろう、と思いました。熱狂的ファンがいるのであまり酷評したくはないのですが、
正直、いろんな所で腑に落ちない点が多かったです。自殺を図り、重態の少女について
クラスメイトたちが語り合う課程はなかなか面白く読んだのですが、人物造詣が薄い
せいか、会話にあまり説得力が感じられなかったです。特に大輝のキャラが前半と後半
では別人のように豹変するのには違和感ばかりを覚えてしまいました。そこに来てのあの
真相。あまりにも現実味がなさすぎて笑いそうになりましたよ・・・。一つの主題について
語り合い、真相を導くという推理劇のような形式は面白いので、もうちょっとそれぞれの
人物を掘り下げて、各人物のキャラを確立させた上で少しづつ真相に近づけて行くように
するともっと面白くなった気がするんですが。登場人物たちが魅力的でないのは青春ミステリ
に於いては致命的。ラストだけは爽やかで読後感の良さを演出しているのだろうけど、これも
ちょっとご都合主義的で、とってつけたような印象に感じてしまいました。









以下ネタバレ厳重注意です。未読の方は決して読まないようにして下さい。













そもそも、各クラスメートにメールを出したのは大輝だった訳だけれど、大輝が麻帆を騙って
メールを打ったというのに説得力が感じられなかった。だって、あんな暴力的なキャラの男が、
女言葉を使ってメールを書くなんてマネが出来るだろうか?しかも、それぞれにご丁寧に文章を
変えて。どうも、キャラに合わない。それに、彼はみんなを集めて結局何がしたかったのだろう?
冬馬が推理したように、みんながどれ位真相に近づいているか確かめたかったからというのは
絶対変。だって、空気みたいな存在だった麻帆のことを考えていたのはせいぜい沙耶くらい
だから、確認するまでもないもの。この真相を導く為には、決定的にいろんな描写が足りて
いないように思いました。大輝が沙耶のことを好きだったというのも、少しはそれに即した
エピソードをはさんだりして匂わせるべきだったように思うのですが。同時に、麻帆が大輝
を好きになったきっかけのエピソードなんかもちゃんと書いて欲しかった。だって、大輝に
関してのエピソードを読む限り、麻帆が彼を好きになる要素なんて一つもないんだもの。
暴力で危うく人を殺す寸前だったとか。こんな人間をどうして好きになったのか、その説得力
を感じさせる描写がないので、どうもいろんなことが腑に落ちなかった。








ううむ。青春小説としても、ミステリとしてもなんだかいまいちな作品でした。
黒田さんにはもっと密度の濃い本格テイストのミステリを書いて欲しいなぁ。
くろけん応援団に真っ向から対立するような記事書いちゃったなぁ。すみません・・・。
私だって好きな作家なんだけどな・・・^^;