ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

柴田よしき/「やってられない月曜日」/新潮社刊

柴田よしきさんの「やってられない月曜日」。

あたし、高遠寧々、28歳。某大手出版社にコネで入社した最下層ヒエラルキーの一員。
身長166センチ、顔ははっきり言ってブス。固い髪もコンプレックス。彼氏、もちろん、なし。
でも、それが何?気の合う同僚もいるし、仕事はきっちりやってる。平凡な毎日、でもそんな
中にもちょっぴり事件は潜んでいて――働く女性の本音満載のワーキングガール小説。


これは出た時に是非とも読みたいと思っていた作品。多分「ワーキングガール・ウォーズ」
みたいな感じなのかな~と思っていたら、なんと姉妹編ではないですか。いきなり翔子さんが
出てきたからびっくりしましたよ。脇役でも、翔子さんに再び会えたのは嬉しかった!相変わらず、
なーんてカッコイイ女性なんでしょう。寧々にびしっとアドバイスするところも素敵だし、
なんといってもラストの弥々に突きつけた言葉にシビレました。身近にこんな女性がいたら
絶対頼っちゃうなぁ。従妹という立場の寧々が羨ましい。

寧々は、ヒロインとしてはかなりビジュアル的には地味。顔もスタイルも良くないし、大手
出版社にいる割に生活も質素で、贅沢なんかとは無縁。性格もキツめで、男の人には全然
もてるタイプじゃない。でも、会社やプライベートで起きるいろんな出来事を通してちょっと
づつ成長して前向きになって行く所は好感が持てました。それに、コネ入社ということを
引け目に感じて、30分遅刻したら30分きちんと残業しちゃう生真面目さとか、コネだからこそ
ちゃんとやろう!という姿勢が偉いと思う。大抵のコネ入社の人間は、コネで入ったことなんか
忘れてのうのうと過ごす人ばかりだと思うけどな。そういう会社にいたことないから想像でしか
ないけど。コネだろうがそうでなかろうが、いい加減に仕事して適当にやり過ごしてる人は
いっぱいいる筈。大きな会社で働ける恵まれた自分の身分を弁えて、一般入社の人に恥ない
ように頑張ろうとする寧々はやっぱり偉い。

啓碧出版の久留米さんのことは考えさせられました。私が久留米さんと同じ職場にいたら
どう思うのだろう。やっぱり少し妬んだりしてしまうのかもしれない。客観的に見て、社内
イジメなんて絶対許せないことだけれど、その場にいてみないと自分の感情がどう動くのか
わからない。弥々のように心からの同情を寄せて怒りを覚えられるのか、それとも頭では
酷いことだとわかっていても、感情は「いい気味」と思ってしまうのか。企業という枠の中
に入れられると、もしかしたら後者になってしまうのかもしれない。そんな中で、寧々が
窓際の彼の席を自作のジオラマの中で「陽のあたるいちばん‘いい席’」にしようと
決める所がとても好きでした。

寧々は基本的には感動屋さんで、とてもいい子だと思う。各作品で一回は他人に感情移入
して泣いている。一話で、対立していた小林の不倫現場を目撃し、彼の悲しそうな顔を
思い出して夜通し泣けるって、私にはあり得ないぞ^^;でも、最終話で彼とは今後いい方向に
向かうのかな、と思わせる展開になりましたが。オタク同士気が合いそうだし(笑)。
ラストでも、大して知りもしない他人を庇って大怪我をしてるのに、その人が無事で良かったと
素直に思えてる。自分には到底出来ない芸当だ。
1/150の住宅模型を見事に創る才能も持っているし(実物を見てみたい)。容姿は平凡でも、
その実、案外非凡なキャラだと思う。それに、いろんなことを前向きに考えられる所がいい。
結構好きなヒロインでした。

私の働いている状況とは全く違うけれど、同じ働く女性として楽しく読めた一冊でした。