ミステリ読書録

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高田崇史/「クリスマス緊急指令 ~きよしこの夜、事件は起こる!~」/講談社ノベルス刊

高田崇史さんの「クリスマス緊急指令 ~きよしこの夜、事件は起こる!~」。

叔父の陰謀によって、何故か一般的な警察では対応しきれない難事件や不可解事件を
解決する為に開設された施設≪EDS≫で働くことになった若手の医師・和藤。クリスマスの
夜に運ばれた急患は、大伴黒主の和歌が書き記された紙を手に絶命した。これは何かの
ダイイング・メッセージなのか――?(「鏡影【緊急推理解決院 EDS 歴史推理科】」)
クリスマスには何かが起きる?全6編を収録。


クリスマスをテーマにした短編集・・・なんですが、う、うーーーん、これは感想が
書きにくい・・・。なんというか、短編集としてまとまっていないというか。クリスマス
で括られているというほど、クリスマスが重要な要素ではない作品が多いし、ノンシリーズ
とシリーズものがごちゃまぜに入っているしで、なんとも脈絡のない印象。これだったら、
一話目のEDSを膨らませて連作短編にするか、K's バーもので連作短編にするかのどっちか
にした方が読ませる短編集になったと思うけどな。各作品がそれ程悪いとは思わなかった
けど、突出した作品というのもなかった。EDSのなんかはいかにも高田さんらしくて嫌い
じゃないけど。K's バーの二作の雰囲気は結構好き。それなりに騙されたし。神籬(ひもろぎ←
また読めない名前だ^^;)のキャラはなかなか面白い。バーのマスターもいい味出してるし。
これは単独でシリーズ化しても良さそうな感じがしますね。
ただ、「迷人対怪探偵」の二作はいけない。ネーミングセンスには笑っちゃいましたけど、
それ以外は全く評価できなかった。ラストのオチで作者の意図したことはわかったけど、
「こんなことが書きたいが為にこの酷い物語を読まされたのか!?」と脱力と同時に怒りが・・・。
「オルゴールの恋唄」、普段はこういう伊坂さん的な群像ものは好みなんですが、かなり
ご都合主義的に感じられてしまい、いまひとつ。でも音のはずれたオルゴールがそれぞれの
人物に与える印象の違いの部分なんかは面白かった。
ラストの「茜色の風が吹く街で」が、作品的には一番好きかな。最初は全共闘時代の話
というだけで少し引いてしまったところがあるのですが、主人公と山崎の友情が青春していて
良かった。ミステリとしてはそれ程凝った仕掛けがある訳ではないけど、全体にノスタルジック
な雰囲気が流れていて、なかなか読ませる作品に仕上がっていたと思う。テスト問題盗難の真相で、
主人公が取った行動の意図が切ない。少年の青春の一ページを上手く描いた佳作だと思う。

各短編はそれなりに面白く読んだものの、トータルで考えると短編集としては煩雑な印象。
ばらばらの作品なら全くばらばらにした方がまだ良かったように思うのですが。クリスマスに
合わせて発売されたのかもしれないけど、物語にそれ程クリスマスに拘る必要性も感じなかったし。
惹句の「ハートウォーミング」が似合うのもせいぜいオルゴールのやつくらいな気が・・・。

うーむ。なんとも中途半端な印象の短編集でした^^;
結構期待してたんだけどなぁ。
ちなみに、1話目のEDSに出て来る外嶋さんの正体はこの作品だけでは判明せず。噂によると、
QEDシリーズの外嶋さんのお姉さんらしいですよ、Aさん(真偽は不明)。
そういえば、QEDの新刊も早く読まないと・・・。