ミステリ読書録

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早川いくを(著) 寺西晃(絵)/「へんないきもの三千里」/バジリコ刊

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早川いくをさん(著)、寺西晃さん(絵)の「へんないきもの三千里」。

小学6年生のユカリは株式会社『オーシャン・リゾーツ』の社長令嬢。欲しいものは何でも
お金で手に入るけど、全学級女子の憧れの的である同じクラスのカズヤの気持ばかりはお金
ではどうにもならない。彼の心を手に入れる為、ユカリはいろんな恋のおまじないを試して
みるが、結果は散々。しかも、ライバルの女子三人組がカズヤに急接近する為に彼の誕生日会
を企画したらしい。焦ったユカリは究極のおまじないを決行することに。しかし、そのおまじ
ないは生き物嫌いのユカリを震撼とさせるものだった。つまり、ひきこもりの兄が育てている
奇妙なカエルの体液をなめるというものなのだ。カズヤとの両想いの夢の為、ユカリはおまじ
ないを決行するが、その途端気を失ってしまう。そして、次に目覚めた時、ユカリは奇妙な
生き物の世界に迷い込んでいた――セレブ少女が迷い込んだ生物界はへんないきものばかり!?
へんないきもの」シリーズ初の小説版。


あれ、べるさんどうしたの?と言われそうな本を読んでしまいました(笑)。みなさま
へんないきもの」という本をご存知でしょうか。実は私も書店でぱらぱら立ち読み
したことしかないのですが、生物界の変ないきものたちをイラストで紹介した実に楽しい
本なのです。イラストを見ていると想像上の生物じゃないの?と勘繰りたくなるような
奇矯な生物ばかりが出てくるんですが、これがすべて実在するらしい。見ると生物界の
不思議を実感させてくれるのです。

さて、そんな「へんないきもの」シリーズの最新刊を本屋で見かけて中身を見てみると、
これがなんと小説形式。小学6年生の女の子が生物界の不思議を巡って大冒険を繰り広げる
らしい。これは読んでみなければ!と借りてみました。

作者が小説家でないせいか、文章や語句にはところどころ引っかかる箇所があったものの(誤字
脱字も結構多いし)、ディズニーのアニメ映画のようなユカリの生物世界での冒険譚はとても
楽しく読みました。ただ、ユカリの家族を始めとする現実世界の方はいまひとつ面白味に欠け
退屈に感じる所も多かったのですが。
主人公のユカリは最初は全く好感の持てない女の子でした。自分勝手でお金で何でも解決できる
と思っている高慢な性格。でも、様々な冒険を通して生物界の弱肉強食や環境問題に直面し、
少しづつ現実の厳しさを知り成長して行くところが丁寧に描かれていて良かったです。途中
から相棒になるギンポとの友情も良かったですね。それだけに、あの展開はショッキング
でしたが・・・多分、ああすることで、ユカリに生物界の厳しい現実を体験させたかったの
だろうとは思いますが・・・。ディズニー映画ではまずこの展開にはしないだろけど^^;

私も昆虫は大嫌いなので序盤のクモやらアリやらの描写にはユカリ同様気が遠くなりかけた
のですが、海底に入って俄然面白くなりました。海底って、ほんとに奇妙な生態の生物たちの
宝庫なんですねぇ。ホヤの体内に寄生するちっちゃいタコとか。生殖行動が終わると、巨大な
雌にくっついたまま退化して朽ち果てて行く雄のオニアンコウとか。ウシナマコとかハオリムシ
なんてもう、宇宙生物かと思うような見た目。写真で見てみたい(笑)。ついつい笑っちゃう
ような生態の生物がわんさと出てきて楽しい楽しい。もちろん、凶暴な牙や爪、はたまた猛毒
なんかを持つ怖~い生き物も出てきますが。どんな世界でも生きて行くのって大変なんだなぁと
思わせてくれます。

冒険を終えたユカリが、今までの生き物嫌いを払拭するようなある行動に出るラストがいい。
成長したユカリには美味しい展開も待っていましたしね。頑張った人間にご褒美を、という
ことなんでしょう。

欲を言えばイラストがもっと入ってて欲しかったな。絵で見てみたい生物がたくさんいた
ので。
ただ楽しいだけでなく、現実の環境問題なんかも考えさせられる良書だと思います。子供から
大人まで楽しめるのではないかな。



ちなみに、画像の帯の右下にいるのがウシナマコ。地球外生物ですよね・・・。