ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

万城目学/「鴨川ホルモー」/産業編集センター刊


京大に入学したばかりの安部は、『京大青竜会』という怪しげな団体から新歓コンパに誘われる。
訝しく思いながらも、知り合ったばかりの高村に誘われ行くことに。コンパに来ていた同じ新入生
の早良京子という美女の美しい鼻に一目惚れした安部は、気がついた時にはその怪しげなサークルの
一員となっていた。しかし、安部を待ち構えていたのは『ホルモー』というとんでもないイベント
だった。果たして『ホルモー』とは何なのか。古都京都で繰り広げられる妖怪絵巻を描いたニュー
ウェーブの青春小説。


みなさまから大幅に遅れをとりつつ、ようやく読みました。出始めの頃に他の方のブログで記事
を見かけてちょこっと気になってはいたのですが、さほど話題にもなっていなかったようなので
「まぁ、そのうち開架に並ぶだろう」などとのんきに構えていたら、あれよあれよと言う間に
人気作家に登りつめ、予約数がえらいことに。もっと早く予約しときゃ良かったな~と思っても
後悔先に立たず。新作はもっとすごいことになってるんだろうな^^;

みなさまが「叫び出したくなる」と言っていた意味がようやくわかりました。ははは。
確かに森見さんと比較されるのがよくわかる作風と文体。しかも京都が舞台で京大生が
主人公。実は内容の予備知識が全くないまま読んだので、『ホルモー』の実体にはびっくり。
し、式神!?しかもなんかえらい微妙な容姿。でもなんとなく可愛らしく感じられるのが
不思議だ。しかもそれを操って戦わせる催しが毎年恒例になってるって。とんでもない
設定なのに、京都が舞台というだけですんなり納得できてしまう。さすが安部晴明を生み
出した街。森見さんの世界よりもくだらなさが控えめな気がしますが、独自の万城目ワールド
にどっぷりはまりました。第17条の設定には弱冠首をかしげるところもあったのですが、
そんなことは瑣末なこと。このとんでもない『ホルモー』という行事を真剣に行うところが
いいです。そして、それと相まって挟まれる友情と恋愛がまた泣かせてくれる。主人公の
安部がまたえらくいいヤツで。早良さんへの奥ゆかしい(?)態度に歯がゆさを感じながらも
応援し、恋に破れた時の傷心ぶりには同じように心を痛め、新たな恋の予感にはにやにや
しながら祝福している自分がいました。やはり特筆すべきは楠木ふみのキャラ造詣。彼女は
この作品の助演どころか主演女優賞ですね。終盤の雨のシーンが最高です。ぶっきらぼう
無愛想の影にこんな熱さを持っている人だったとは!!ホルモーシーンでの知将ぶりにも脱帽。
そして、芦屋との最後の戦いで叫ぶ「あんなバカ男に負けてたまるか」の台詞が好きだ~~。
かっこよすぎるぞ、凡ちゃん・・・(惚れた)。もちろん、その直前の安部へのお願いの
可愛らしさにもやられました。このギャップがいいですねぇ。芦屋と早良さんのキャラは
ちょっと類型的すぎた気もしますが。まぁ、彼らとのエピソードがなければここまで二人の
仲も盛り上がらなかっただろうから仕方ないのかな。

あー、面白かった。単にホルモーの戦いだけだったらここまではまらなかったかもしれない。
その間に挟まれる友情と恋愛に、大学生ならではの青春のほろ苦さや甘酸っぱさが感じ
られるところが何よりいい。最後は爽やかに読み終えられました。

それにしても、青竜会代替わりの舞には笑った。な、何故あのCMの歌なんだ~~^^;;
でも、ついついつい一緒に口ずさんでしまった・・・とか書くと年齢がばれるな^^;;
このシーンはほんとにモリミーの世界っぽいですね。裸踊りだし(笑)。くだらなくて
オモチロイ(つい使ってしまった)。

ところで、何故表紙が5人じゃないのかが気になったのですが、ネットでこの本の書評を見てたら、
どうやらこの表紙絵はビートルズのアルバムのジャケットを真似たものらしく、一人(多分
双子の片割れ)はこのシーンを『撮影』している役だから、と解説している方がいらっしゃい
ました。なぁるほど~、と思いました。


楽しく読めて大満足の一冊でした。続編も予約しなくちゃ(鹿男も^^;)。