ミステリ読書録

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法月綸太郎/「犯罪ホロスコープ Ⅰ 六人の女王の問題」/カッパノベルス刊

法月綸太郎さんの「犯罪ホロスコープ Ⅰ 六人の女王の問題」。

荒川の河川敷でホームレス男性が暴行を受け死亡した。ホームレス体験ルポの為、一月限定で
ホームレス生活を体験していたよろずジャーナリストの飯田才蔵はその場に居合わせ、巻き添え
を喰った。飯田は、殴られ意識を失う寸前に、男女の話し声を聞いていた。そして、立ち去る
寸前、女は死んだホームレス男性の上に飯田がかけたゴールデン・フリース(金の羊毛)の
ジャケットを持ち去っていた。飯田から相談を受けた法月綸太郎が事件の真相を解き明かす
(「ギリシア羊の秘密」)。星座に纏わる六編の短編を収録した本格推理短編集。


我らがのりりん(←?)新刊です。地元の図書館で予約8人待ちくらいだったのですが、またまた
隣街の図書館の開架で発見。思ったよりも早く読めて嬉しい^^
相変わらず端正な本格ミステリで楽しめました。今回は『悩める探偵法月綸太郎は影を
顰め、なかなかの名探偵っぷりを披露。法月警視や事件に関わる人々の証言からヒントを得て鮮やか
に謎を解き明かします。自分ひとりがわかっているものだから、相手をじらしたりして、ちょっと
意地の悪さも垣間見えました。なんとなくのりりんには悩んで悩んで謎を解いて欲しい気もする
のであっけなく解決しちゃうと物足りなさを感じたりして・・・(なんてやつだ)。
まぁ、短編だから悩んでる暇(紙面)なんてないので仕方ないとは思うのですが^^;;
ギリシア神話はあまり詳しくないのですが、星座をモチーフにするというのは面白い発想ですね。
弱冠こじつけで苦しいような部分がなきにしもあらずですが、こういう連作は結構好きです。



以下、各作品の短評を。


「[牡羊座] ギリシア羊の秘密」
飯田才蔵は「生首に聞いてみろ」に出て来たキャラらしいのですが、全く覚えておりません
でした^^;犯人が現場から裏返しになったゴールデン・フリースのジャケットを持ち去った
理由は、とっさに判断したとするとちょっと苦しいかな。そんな発想、誰もしないと思う
けど・・・^^;


「[牡牛座] 六人の女王の問題」
これは表題作になるだけあり、なかなか凝っていて面白かったです。でも、俳句の暗号に
ついてはさっぱり^^;普通に推理して解ける人っているのかなぁ、こういうの。 読んでる
分には面白いけど、第三者に向けた暗号だとしたら相当知識力のある人にしかわからない
と思うけどなぁ。だいたい、Nクイーン問題なんて知ってる人が世の中にどれだけいるんだー
(と完全に負け惜しみ発言)。でも、本文には『初歩的な暗号』って書いてあるんですよね
・・・そうなの?^^;
暗号を誰に向けて作ったのか、がポイントですね。ものすごく皮肉な結末になっちゃって
ますけど^^;


「[双子座] ゼウスの息子たち」
これは謎解き読んで「えーーー!」でした。この謎の反転の仕方は見事ですね。言われる前に
気付きそうなものだけど・・・人の思い込みを巧く利用したトリックで素直に感心しました。
真面目な話なのに、あだち充の「タッチ」が出て来たりしてなんとなく違和感を覚えていた
んですけどね。これも伏線だったとは。双子の入れ替わりトリックはいろいろ読んだけど、
こういう切り口のものは初めてで瞠目。


「[蟹座] ヒュドラ第十の首」
これだけ犯人当てアンソロジー気分は名探偵』に収録されていたので既読でした。トリックなんかは
ほとんど覚えていなかったので再読って感じもさほどしなかったのですが(オイ)。でも、前回も
思ったのですが、同姓同名の人間がそんなに狭い範囲に三人もいるものなのかなぁ??そんなに
ありふれた名前でもないと思うんですけど・・・。犯人がヒラドノブユキを特定した経緯にも
ちょっと疑問を覚えました。でも、ロジックの組み立てはさすがの出来だと思います。


「[獅子座] 鏡の中のライオン」
私は獅子座なので、世の中の女性がみんな葉月みたいだと思われると困る^^;あるはずのない
ピアスが落ちていたのは何故かという、シンプルだけど不可解なこういう謎をテーマにした
作品は結構好き。綸太郎が全く面識のないある人物の名前を言い当ててびっくりしたのですが、
推理の経緯を読んで納得。なーるほどぉ~~って感じでした。


「[乙女座] 冥府に囚われた娘」
怪しげな都市伝説から意外な方向に物語は流れて行き、最後の仕掛けも読ませてくれます。水中毒死
って、一時期話題になりましたね。水飲んだだけで死んじゃうなんて、怖い。被害者が水を大量に
飲んだ状況を想像するとちょっと怖くなります。美しくなりたいという気持ちにつけ込む人間が
世の中にはなんて多いのか。それが身近な人間だったりするから始末に負えない。こういう犯罪は
やけにリアリティがあって、暗澹たる気持になりました。



それにしても、このシリーズはどうやらリアルタイムで時間が流れている模様。現代らしい表記が
はしばしに出て来る。脳内メーカーまで出て来てびっくり(暑暑暑暑・・・^^;)。
一体のりりんはいくつになっているのだろう・・・。
このまま結婚せずに独身貴族でいるのだろうか・・・などと一人余計な心配をするのでした。


残りの六星座も楽しみ。
『遅筆作家』の称号は返上してもらって(苦笑)、なるべく早くお願いしたいですね・・・^^;