ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

上田早夕里/「ショコラティエの勲章」/東京創元社刊

上田早夕里さんの「ショコラティエの勲章」

老舗の和菓子店 < 福桜堂 >神戸支店で働く絢部あかり。その二軒先には、近頃話題の人気
ショコラトリー < ショコラ・ド・ルイ >がある。バレンタインシーズンでバレンタイン限定の
チョコを買いつつ偵察に訪れたあかりは、そこで不可解な万引き事件に巻き込まれる。若い
少女たちの万引きを目撃したという女性と、濡れ衣だと主張する少女たちが諍いを始めたのだ。
一瞬少女の万引きを目撃したような気がしたあかりは、消えた菓子箱の行方を思いつき、シェフに
進言する。その事件がきっかけで、 あかりは< ショコラ・ド・ルイ >のショコラティエ長峰
懇意になり、次々と不思議な事件に遭遇するようになる――お菓子をめぐる人間模様を描いた
連作短編集。ミステリフロンティアシリーズ。


上田さんは初めて読む作者さんです。ミステリフロンティアじゃなかったら多分一生手に
とらなかっただろうと思うので、このレーベルに感謝。本当に、一体どこから連れてくるんだ
という作家を次々出してきますねぇ。まさしくミステリ『開拓』レーベル。

和菓子店の工場長の娘で売り子がヒロインですが、全体的にチョコレートの香りが漂うような
甘さとほろ苦さを感じる連作集。それというのも、ヒロインあかりが勤める二軒先の人気
ショコラトリーのショコラティエ長峰シェフが全篇に亘ってキーパーソンになっているせい。
この長峰シェフの作るスイーツがもう、私のようなスイーツ大好き人間にはたまらなく美味しそうで
たまりませんでした。出て来る事件そのものは日常の謎系で、ささいな悪意や出来事を描いたもので、
物語としての派手さはありません。それぞれのキャラ設定ももう少し特色があると良かったかな。
長峰シェフだけはなかなか味のあるキャラだと思いましたが。でも、この作品の本当の主役は
人物ではなく『スイーツ』であると考えれば、これ位でも良いのかも。とにかく、甘いもの
好きならば是非読んで欲しいと思える位、スイーツ描写が秀逸。本当に、涎が出て来そうでした。

ただ、お菓子のように甘くほんわかした物語かと云えば、そうではない。どの作品も結末は苦み
を残した余韻のあるものが多い。ヒロインは人の悪意や、身勝手さ、甘さに直面して、苦い思いを
抱えて物語が閉じる。人それぞれの人生には、甘いお菓子のような楽しい思い出ばかりではなく、
苦みのあるビターチョコのような経験も必ずあるのだと戒めているように思いました。

ヒロインのキャラがいまひとつなので、なんとなく感情移入できないまま読んだせいで、近藤さん
の「タルトタタンの夢」のように「好きだーー!」と思える作品とまではいかなかったというのが
正直な所。でも、美味しそうなスイーツ描写の前にほとんどノックアウト寸前になったのも確か。
甘いもの好きならば読んで損はしないと思います。長峰シェフのボンボンショコラとオペラが
食べたい・・・。ショコラ・ド・ルイの描写を読んでいて、銀座のピエール・マルコリーニ
思い出しました。あそこもチョコレートパフェが確か1500円位していたような・・・(それ
を目当てに行ったのにチョコアイスが全て売り切れで食べられなかった苦い思い出が・・・)。

二話の『七番目のフェーヴ』に出て来たガレット・デ・ロワ。↑に挙げた近藤さんの
タルトタタンの夢」の記事の時にも書きましたが、以前フランスに旅行した時にパン屋さんで買った
ガレット・デ・ロワの切れ端に入っていたフェーヴのことを今回も思い出しました。
今回はそのフェーヴの写真を公開♪陶器で出来たマリア様なのです。大きさは1.5センチくらい。
なんだかご利益ありそうでとても嬉しかったな~(別にキリスト教徒ではないけれど^^;)。


もともとフェーヴとは『そら豆』のことですが、いろんな形のがあるそう。マリア様は珍しいのかな~??
https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/b/belarbre820/20010101/20010101014550.jpg



甘いもの中毒の方には注意が必要です(読んだら即行スイーツを買いに走りたくなるかも!?笑)☆