ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

金城一紀/「SPEED」/角川書店刊

金城一紀さんの「SPEED」。

わたし、岡本佳奈子、16歳。お嬢様女子高に通う平凡で真面目な女子高生。ある日、大好きな
家庭教師の彩子さんが、通っていた大学の校舎から転落死した。警察は自殺と判断したけれど、
わたしは彩子さんが不倫して悩んでいたことを知っているし、その証拠も持っている。その事を
彩子さんが信頼していると話していた同級生の中川という男に相談しに行った帰りに、わたしは
暴漢に襲われた。窮地に陥ったわたしを助けてくれたのは4人の救世主たち。事情を話したわたし
に、彼らは意外な提案をしてきた。そこから、わたしのはじめての冒険が始まった――ザ・ゾン
ビーズシリーズ第三弾。


はい。一人金城祭続行中です。という訳で最後のゾンビーズシリーズも読んでしまいました・・・
うえーん、もう続き出てないのー!?この本の刊行が2005年だから、そろそろ続きが
出てもいい頃って気もするんだけどなぁ。出て欲しい。っていうか、出すべきだ!せめて
卒業までのあと数ヶ月分は書いて欲しい。まだまだ彼らと冒険したいもの!

前作の「フライ、ダディ、フライ」は中年のおっさんの冒険でしたが、今回は女子高生の冒険。
だいたい流れ的にはほぼ「フライ~」と似た展開ではあります。ですが、その王道的展開が
今回も実に良かった。タイトルの通り、スピード感溢れる筆致で引き込まれてあっという間に
読了。このシリーズはいつも一気読み。で、終盤に差し掛かるにつれて読み終えるのがとても
寂しく感じる。もっともっと、彼らと一緒に冒険していたい、彼らと一緒に飛んでみたい、と
思うのです。

今回は今まで謎の人物だったアギーにかなりスポットが当てられてます。いやー、スンシンも
かっこいいけど、アギーも負けてない。佳奈子なんか、何度アギーの魅力に気が遠くなりかけて
るんだか(苦笑)。しぐさや言動がとにかく色っぽい。オトコマエ。原作の描写を考えると、
岡田君は間違いなくスンシンよりもアギーの方に近い気がするんだけどな・・・。でも、
もちろん今回もスンシンはかっこ良かった^^佳奈子に戦い方を教えるくだりで、鈴木さんの
ことを懐かしく思い返す場面が嬉しかった。鈴木さんとはもう会ってないのかなぁ。思えば、
佳奈子は鈴木さんの娘と同じ学校の筈だから、ラストで佳奈子に賛同するメンバーに入って
いたりするのかも(そうだと嬉しい)。

「対話篇」で出て来た大学教授の谷村が出て来て、微妙にリンクしてるんですね。金城作品は
ほぼどの作品もなんらかのリンクがあるようです。ばらばらに読んでると、全然気付けなかったり
するのが悔しい^^;金城作品全体相関図が欲しいです。多分全く知らないところで意外なリンクが
あったりするんだろうなぁ。

今回も例に漏れず映画のタイトルがいくつか出てきます。お馴染みの燃えよドラゴン
リトルダンサー、そして犬神家の一族。「リトルダンサー」は私も大好きな映画。主人公の
少年が必死で踊る姿がとても愛らしくて、癒される作品。それにしても、山下君の「犬神家」
には本当にウケた。相変わらず彼は素晴らしい。彼のような人間がいればきっと世界は平和です。
ヒロシの言葉通り、彼のような人間は大事にしなきゃね!

ラストで、佳奈子がみんなを率いて車に乗って加速するシーンは本当に爽快でした。もちろん、
中川を殴ったシーンにも胸がすかっとしました。あんなクズ男には天誅が下って当然!!
マンネリで予測できる展開だろうと、それがこのシリーズの醍醐味なんだからいいんです。
痛快で、爽快で、明日も頑張ろうって気持ちになれる。明日に向かって、一歩を踏み出そうと
前向きに思える。冒険することって、大切だ。老若男女関係なく、人は誰だって冒険できる。
そして、いつだって今より成長することが出来るんだって、多分金城さんが一番言いたいのは
そういうことなんじゃないかって思う。私もゾンビーズたちと冒険がしてみたいな。

未読の金城作品は残すところ『GO』のみ(ドラマ『SP』のノベライズは覗いて)。
新刊が出る予定とかないのかなぁ。『GO』は映画はとても好きな作品だったので、原作も
間違いない筈。でも、読む作品がなくなっちゃうと寂しいから、少し時間を置こうかな^^;