ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東野圭吾/「探偵倶楽部」/祥伝社文庫刊

東野圭吾さんの「探偵倶楽部」。

会員制でVIPのみが利用できる調査機関『探偵倶楽部』。倶楽部のメンバーだった大手スーパー
マーケットの社長・正木藤次郎が自宅で自らの喜寿を祝う宴会の後、自室で自殺した。しかし、
社長の自殺が公になると困る立場の役員たちは、協力し合って死体を隠し失踪と見せかけようと
目論む。しかし、社長の妻・涼子が、藤次郎の行方を見つけて欲しいと探偵倶楽部に調査を依頼
し、事件は思わぬ真相を露呈されることに――正体不明の美男美女の探偵コンビが五つの難事件
の謎に挑む。


実は東野さんの初期~中期辺りの作品は未読がかなりたくさんあります。開架にあまり本がない
せいもあるのですが、あったとしても本が汚くてどうも借りる気になれないというのも大きい。
本書も相当本の傷みは激しかったのですが、ここらで未読の東野作品を減らそう!と一人秘かに
個人企画を打ちたてまして、思い切って借りてみた次第(前置き長いぞ^^;)。これから
なるべく開架で見かけたら手を出すことにしよう・・・と心秘かに決意してみたり。

という訳で開架で目出度く発見して、題名とあらすじに惹かれて借りてみたのがコレ。五つの
短編が収録された連作短編集になっています。

で、感想は・・・う、うーん、微妙。面白くない訳ではないのだけど、どうもミステリとしての
魅力をそれほど感じなかった。一番がっかりしたのは探偵倶楽部の二人のキャラ設定が魅力的
でないこと。多分、敢えてそれを狙って書いているのだろうとは思うのだけど、それにしても
全く人間味がなく、調査の過程なんかも全部端折ってしまっているので、人物像が全く見えて
来ないことに据わりの悪さを感じました。各作品の主人公はあくまで事件の渦中に居るいずれか
の人物であり、探偵は徹底して『脇役』であるということを強調したいのはわかるのですが、
せっかく『探偵倶楽部』という設定を作ったのだから、もう少し二人のキャラに色がついて
いて欲しかった。名前も素性も全くわからないままだし、探偵二人の間の会話も全くないし。
二人がロボットだったというオチでも驚かないのではと思える位、感情が見えて来なかった。
ただ、「依頼人の娘」だけは、ラストでちょっと感情を動かされたのかな、と思える結末
ではありましたが。

全体的にミステリとしてもさほど驚きを感じる真相はなかったかなぁ。全体に漂う作風も妙に
古臭い。アベックなんて言葉も出て来るし^^:初版は平成8年になっているから今より
12年ほど前ではあるのですが、昭和の物語と言われても納得できるような・・・(酷)。

ミステリとして一番面白いと思ったのはラストの「薔薇とナイフ」かな。由理子の妊娠相手は
素直に騙されましたし、ラストで明かされる血縁関係の真相もなかなか凝っている。ラストの
コールサインを持って来た終わり方もなかなかいい。後味はあまり良くありませんが。


まぁ、トータルで言うと、東野さんにしては普通だった・・・という感じでしょうか(黒)。
あっという間に記憶の彼方に忘れ去られそうな予感が・・・^^;;
さくさく読めるのはこの頃から変わりませんけどね。
次は何を借りようかな。まぁ、借りたくても借りれない場合がほとんどですけど^^;
とりあえず「宿命」とか「魔球」とか、読みたいんだけれど、見かけないのよね。
よもさんお薦めの「学生街の殺人(でしたよね?)」もずっと探しているけど出会えて
いないし。そういえば、デビュー作の「放課後」も読んでないんだよなぁ・・・。
気長に構えるしかないか^^;