ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

荻原浩/「噂」/新潮文庫刊

荻原浩さんの「噂」。

渋谷の女の子たちの間で噂になっている「レインマン」。レインコートを着たレインマン
出没して、女の子の足を切ってしまうが、『ミリエル』の香水をつけていれば狙われない――
噂の出所は、新作香水の販売促進の為に広告会社が仕組んだデマだった。しかし、噂の通りに
女子高生が足首を切られた死体となって相次いで発見された。刑事の小暮は、コンビを組む女性
警部補・名島と供に事件を追う。直木賞作家が贈る衝撃のサイコ・サスペンス。


どんな人のレビューを読んでも「ラスト一行が・・・」と書いてあるので、以前から気になって
いた作品。都市伝説ものはもともと好きなジャンルなので、巷ではびこる都市伝説の発生は
こんなものなのかもしれないな~などと興味津々で読みました。ただ、前半は一言メッセージ
でも書いたように作品に入り込めず弱冠苦戦。小暮刑事と娘の菜摘ちゃんの会話なんかは
オロロ畑シリーズの杉村と早苗ちゃんを彷彿とさせるような微笑ましさがあって良かったし、
小暮刑事と名島警部補コンビ(チーム?)のやりとりも好きだったのですが。ちょっと忙しい
時期に読んでいたので事件の経過なんかがすんなりと頭に入って来なかったせいかも。
もっと余裕のある時に一気読みした方が良かったかもしれない。
でも、後半過ぎると俄然面白くなって一気読み。とても良く出来ているのだけれど、犯人は
あまりにもストレートすぎて「えっ、そのまんま!?」とツッコミたくなりました。
・・・が、おそらく、この本が評価されているのは多分ここじゃないんだろうなぁと思いながら
最後の一行を期待して読み進めて行きましたら・・・




うわ。こうきたかーー!!(がーーーん)



確かにこれは最後の一行、というか、たった一言にものすごい衝撃がありました。
最後の一行の衝撃!としつこく言われて身構えて読んだのに、やっぱりやられましたもん。
こういう煽り文句はあんまり書かない方がいいんじゃないかなぁとは思いますけど(とか
いいつつ、こうやって記事にしちゃってる私も人のこと言えないけど^^;)。
まっさらの知識で読んだ人はさぞかし驚くだろうな、とは思う。というか、ピンと来ない人も
いるかもしれませんが・・・^^;
実は、この一行に直結するとは思わなかったけど、なんとなくこの最後の言葉を吐く人物に
関しては、何かあるだろうなぁとは思ってました。こういう形でとはねぇ・・・。でも、
それまでの過程を考えると、あまりの黒さにショックが大きかったです。結局作者が本当に
言いたかったことって、噂の怖さでも、殺人の怖さでもなく、○○○○(ネタバレ防止の為
フセ字。三文字でも表現可能)の怖さだったのか・・・。まぁ、この部分に関しては正直、
唐突感は否めなかったですが、この部分があるからこそ、この作品が一級のサイコサスペンス
として評価されるのでしょうし、直前のほのぼのムードから一気に読者を突き落とす手腕は
見事と言うしかないですね。後味は良くないですけどね。この後のことを考えちゃうとね・・・。
ユーモラスな荻原作品しか知らなかったので、こんな黒い作品書くひととは思わなかったです
(だいたい、ミステリの人ってイメージなかったし)。


これはちょっと忘れられない作品になりそうだなぁ。
ちなみに、ラスト一行の衝撃!と言われているからって、最後の一行だけ読んでも意味が
わからないと思われます。本文中にちりばめられた伏線を読んでこそ、この衝撃が味わえる筈。
欲を言えば、レインマン自体にももう少し衝撃が欲しかったけど。レインマンの最後に関して、
疑問に感じる部分もありましたし(私の読み取り不足なだけかもしれませんが^^;)。

それでも充分読み応えのあるサスペンスでした。
衝撃のラスト一行が気になる方は是非どうぞ!