ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

近藤史恵/「ヴァン・ショーをあなたに」/東京創元社刊

近藤史恵さんの「ヴァン・ショーをあなたに」。

下町のフレンチレストラン、ビストロ・パ・マル。気取らずに絶品のフレンチが楽しめる
このお店には、毎日様々な人々が訪れる。シェフの三舟は無愛想な変人だが、料理の腕は
一級品。その上、お客によって持ち込まれる不可解な謎も鮮やかに解決してしまうのだ。
近所に住む田上夫婦の家のスキレットはなぜかすぐに錆びてしまうという。その理由には
意外な事実が隠されていた――(「錆びないスキレット」)極上のフレンチと心温まる
ミステリが味わえるシリーズ第二弾。


これぞまさしく『お口直し』の一作でした。やっと癒されました~~(笑)。
前作「タルト・タタンの夢」で大好きになったビストロ・パ・マルと三舟さんのお料理。
間を空けずに続編が読めたことはとても喜ばしい。今回も期待に違わぬ美味しそうなお料理の
数々に眩暈がしそうでした。特に三舟さんのブイヤベースは食べてみたい!!実はフランスの
マルセイユで本場ものを食べたことがあるのですが、その時はいまいち美味しさがわからず、
ピンと来なかったんですよね^^;私自身が魚介ものをそんなに好きではないというせいも
あったのですが・・・。でも、三舟さんのブイヤベースだったらその時の苦い思い出を払拭させて
くれそう。今回は伝統的なフランス料理はそれ以外はそんなに出て来ませんでしたが、三舟さんが
作るお味噌汁や卵粥もとっても美味しそうで、作ってもらった人物が羨ましくなりました。
でも、この作品の魅力はお料理だけではなく、三舟さんの優しい謎解きにもあります。今回も
三舟さんの謎解きによってじんわりと心が温まりました。中にはいくつか苦い結末のものも
ありましたが・・・。特に「憂さばらしのピストゥ」のラストで、南野シェフがしたことに
対して三舟さんが突きつけた辛辣な言葉は胸に突き刺さりました。最近世間を賑わせている
食品会社や高級料理店の不誠実な行動に対する戒めの言葉のようにも思えました。料理人が
みんな三舟さんのように料理に対して誠実な人ばかりだったら、お客の立場でも安心して料理が
食べられるのに・・・現実はうんざりするような事件ばかりで嫌になってしまうけれども。
志村さんが言うように、三舟さんは大事なことは間違わない。だから彼の料理は素晴らしく、
たくさんの人を虜にするのでしょう。

今回の目玉といえばなんといっても三舟さんの恋!!どう考えても高築くんの誤解なんだろう
なぁと思って読んでいたのですが、意外なラストにびっくりでした。三舟さんも人間だった
んだなぁ。あの変人シェフが動揺してるのがなんだか可笑しくて微笑ましかったです。
それにしてもおしいことを・・・でも、三舟さんにとってはそれで良かったのでは(あんまり
彼女に好感持てなかったんで^^;)。それ位なら私が立候補したいぞー!こんな美味しい
料理が毎日食べられるなら・・・でも太りそうだな^^;

パ・マルの絶品ヴァン・ショーにまつわるラスト一作が読めたのはファンにとっては嬉しかった。
三舟さんのヴァン・ショー誕生にはこんな経緯があったのね。本当にヴァン・ショーを飲んで
心が温まったような気分になれました。ミリアムばあちゃんのヴァン・ショーも飲んでみたい~!
あ、お酒弱いんだった、私・・・(苦笑)。
「ぼく」とルウルウとの『別な話』も是非読んでみたいな~。「ぼく」にとっては不名誉な
エピソードかもしれないですけどね(笑)。


今回も三舟さんの絶品料理と謎解きでお腹いっぱいです(実際はお腹が空くのだけど^^;)。
やっぱりこのシリーズは素敵。まだまだ続けて欲しいです。