ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「本からはじまる物語」/メディアパル刊

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「本からはじまる物語」。

豪華執筆陣が贈る「本」「本屋」に纏わる18の掌編を集めたアンソロジー。書店向け
広報誌「しゅっぱんフォーラム」に掲載された書き下ろしの掌編小説18作品を収録。


【収録作品】
「飛び出す、絵本」恩田陸
「十一月の約束」本多孝好
「招き猫異譚」今江祥智
「白ヒゲの紳士」二階堂黎人
「本屋の魔法使い」阿刀田高
「サラマンダー」いしいしんじ
「世界の片隅で」柴崎友香
「読書家ロップ」朱川湊人
「バックヤード」篠田節子
「閻魔堂の虹」山本一力
「気が向いたらおいでね」大道珠貴
「さよならのかわりに」市川拓司
「メッセージ」山崎洋子
「迷宮書房」有栖川有栖
「本棚にならぶ」梨木香歩
「23時のブックストア」石田衣良
「生きてきた証に」内海隆一郎
「The Book Day」三崎亜記


本や本屋に纏わる話ばかりを集めた掌編集。どの話も短いけれど、その作者さんの本や本屋
への愛情が伝わって来てとても良かった。本好きとしては、やっぱりこういう題材の物語を
読むのはとても楽しい。初読の作家さんばかりでしたが、「本」「本屋」というテーマが
与えられているせいかすんなり入っていける作品ばかりでした。ただ、テーマが共通している
だけに作風が被ってしまった作品が何作か見受けられ、似たような印象になってしまった点は
残念でした。一番気に入ったのは冒頭の恩田さん。本を狩るという設定も面白いし、ファンタ
ジックで御伽噺風の世界観もとても好みでした。本の森で私も本獲りやってみたい!!
ひらめきの精に愛された作家ならではの発想はさすがという感じでした。空を飛んで行く本
という光景はラストの三崎さんも使っていますが、情景を想像するとシュールではあるけれど、
飛び立って行った本たちが、今日も誰かの元に届いてみんなを楽しませていると思うと、不思議と
ワクワクして嬉しい気持ちで本を閉じることが出来ました。

他に好みだった作品は、本多さん、今江さん、二階堂さん、阿刀田さん、朱川さん。
猫を登場させた作品が多く、そのどれもが魅力的でした。二階堂さんは懐かしの水乃サトル
が出て来て嬉しかった。出たばかりのシリーズ新刊への伏線だったのかも?(予約中)

ちなみにワーストは大道さんと梨木さん。大道さんは主人公に全く共感出来ず、それほど本に
拘った話でもなく、どうもこの企画の趣旨から外れているように思えてならなかったです。
梨木さんは変にグロテスクな描写が多く、一体何が書きたかったのかよくわからなかった。
梨木さんだったらもっと美しい本の世界が書けそうなのに、なんでこんな意味のわからない
気味の悪い話を書いたのか理解不能。私が汲み取れなかったのがいけないのかな・・・。


本や本屋好きならば是非手に取って欲しいアンソロジーです。絶対一人は好きな作家がいる筈!
どれも短くてすぐ読めるので、お休み前に1~2作づつ読んだりするのも良いかも(私は
一気に読んじゃいましたが^^;)。
大作の合間に読むには最適♪(←進んでないらしい・・・)。