ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

小路幸也/「21 twenty one」/幻冬社刊

小路幸也さんの「21 twenty one」。

21世紀に21歳になる21人。それが榛(はしばみ)中学校の同級生だった僕ら。本当に仲の
いいクラスだった。卒業後も連絡を取り合って、一生付き合っていける仲間だと思っていた。
しかし、そんな最高の仲間の一人、晶が自殺した。晶は何故自殺したのか。残された同級生
たちは各々が彼の死について考え、自分のせいではないかと自責の念にかられる。真相は
どこにあるのか――。


相変わらず読みやすくて、あっという間に読み終わってしまった。でも、内容がどうだったか
というと、前作「モーニング」との類似ばかりが目立ってしまい、マンネリという印象が
強かったです。何故、続けて同じ様な作品を書いたのでしょうか。今回も仲の良かった
同級生の過去を回想していくというのがストーリーの核になっているし、同級生のお葬式で
集まるというのも一緒。違うのは前作は大学でしたが、今回は中学の同級生という点。21人も
出て来るので、誰が誰やら整理するのが大変でした。21人もいて、全く争いもなく、一生の
友達として仲良く付き合って行ける仲間なんてあまり現実味がないけれど、こういう仲間
が出来るっていうのは理想だと思う。すごく羨ましいです。私の中学は一クラス40人以上
いたし、クラスで団結するべき合唱祭やら体育祭でもさほど熱を入れて取り組んでなかった
ので、クラスで一つになったという記憶がないから。クラスにどういう同級生がいたかも
あんまり覚えてない位です。もちろん、今でも付き合いのある大切な友人もいますが、ほんの数人
だけです。社会に出て、それぞれが違う道を歩んで行けばだんだん付き合いがなくなって行く
のが普通だと思うので、彼らのような関係が築けるというのは本当に素敵なことだと思います。

ただ、作品としてはどうも食い足りない。晶の自殺の原因については早い段階で気付いて
しまったし、「モーニング」の時のように、更にその先がある訳でもなく呆気なく終わって
しまったし。安易に同性愛が出てくるのもなんだかなぁと思いました(これも前作から
引き続きだし)。肝心の自殺の理由を知って、晶という人物に好感が持てなくなりました。
だって、ほんとに完全に単なる○○○○ですよね、これ(ネタバレの為フセ字)。原因に
なった人間にしてみればたまったものではないです。そして、その人物の晶の死後の態度も
あまり好感が持てるものではなかった。この理由で自殺する晶の弱さも好きじゃない。多分、
世の中にはたくさんの人が同じ様な理由で自殺しているのかもしれない。でも、私が許せないのは、
あんなに素敵な仲間がたくさんいるのに、それでも『寂しい』なんて言って一人で違う場所
に行ってしまったこと。自殺者のほとんどが、もっとずっと孤独で誰にも助けてもらえない
で死んで行くのに。こんな恵まれた環境にいて、安易に死を選んでしまった晶が許せない。
彼のことが最後まで理解できず、後味の悪い読後感でした。

うーむ。続けて似たような作品を書いてきたのに意味はあるんだろうか。小路さんの中で、
こういう系統の作品を書いて行きたいという思いがあるからなのか。過去を振り返る作品が
悪いとは言わないけど、このままの路線で行くとしたら、正直マンネリ感は拭えなくなって
行くと思う。私としては、もっと違う切り口の作品が読みたいです。