ミステリ読書録

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三津田信三/「十三の呪 死相学探偵 1」/角川ホラー文庫刊

三津田信三さんの「十三の呪 死相学探偵 1」。

他人に現れた死相が視えるという特殊能力を持つ弦矢俊一郎。大学卒業後にその能力を生かして
生計を立てるべく、東京で探偵事務所を開く彼の元に、初めての依頼人内藤紗綾香がやってくる。
キャバクラで青年実業家の入谷秋蘭に見初められた紗綾香は秋蘭と婚約を交わすが、結婚直前に
秋蘭が急死してしまう。葬儀の後もそのまま入谷家で生活していた紗綾香だったが、何かに憑かれ
ているのではないかという嫌な予感がして事務所を訪れたという。しかし、彼女の顔に死相が
視えない俊一郎は、依頼を受けずに追い返すのだが、数日後、再び事務所を訪れた紗綾香の全身
には黒いミミズのようなおぞましい‘何か’が蠢いていた――新シリーズ第一弾。


Iさん、Yさんの「買え」という無言(?)の圧力に負けて(笑)購入した三津田さんの新シリーズ。
いや、もともと最初に書店で見かけた時に気になって買おうか迷って保留にしておいた作品
ではあったのですが^^;

むーーー。ゆるかった・・・。設定のはしばしに三津田さんらしさは伺えるものの、
全体的に全てが薄っぺらい。一生懸命ホラーテイストを入れようとしているのに、いまいち
怖さもないし、変にお笑い要素を入れようとしてはすべっているし。この中途半端さは何だ。
一番問題なのは、主人公の俊一郎の絶望的なまでの魅力のなさ。こんなに好感の持てない
主人公も珍しいんじゃないか・・・。キャラで作品を読むことが多い私としてはこの主人公では
読むモチベーションが上がらないです・・・。クールといえば聞こえはいいけど、要するに人間
嫌いなだけで、人との会話は成り立たないし、仕事に意欲はないし。後半は少し態度が変わり、
少し事件解決に積極的に取り組むようになりましたが。でも、死相が視える相手を『サンプル』
としてしか見ていない態度が不快でした。登場人物たちの会話もどこかそらぞらしさがあり、
しっくり来ない。三津田さんってこんなに文章下手だったっけ?と首をかしげてしまう場面が
いくつもありました。文庫書き下ろしに合わせてこういう文章にしてるのかもしれませんが。

入谷家の怪現象の謎に関してはもう、絶句。笑うしかない真相というか・・・。だいたい、
完全にこじつけに近い部分もあるし、素直に感心することは出来なかったなぁ。刀城シリーズ
とは気合の入れ方が明らかに違うような真相。これはバカミスに近いのでは・・・。俊一郎の
解決方法にも苦笑するしかないって感じでしたし。どうも、ホラーにしてもミステリにしても
中途半端な印象でした。そもそも、俊一郎の能力は他人の「死相」が視えるというだけだから、
それを祓う能力はないわけで、憑いてしまった何かをどうすることもできない。だから、
根本的な解決に至らないのは仕方ない所なのかもしれません。今回、呪いをかけた『術者』の
正体はわからず終い。2巻以降の持ち越しなのかな、これは。

続きはもう買わないだろうな・・・。図書館に入れば読むとは思いますが。
内容がダメでも、キャラが気に入れば割と好きで読み続ける方なんですが、俊一郎にはそういう
気持ちを抱けません・・・。彼と祖母の会話はかけあい漫才みたいで面白かったですけど。
気に入ったのはそこくらいだったな~^^;

ただ、刀城シリーズとのリンクにはにやり。でも、今回一番驚いたのは、入谷家の怪現象の一つ
「本棚の本が焼かれる」で焼かれた本の中にピエール・シニアック「ウサギ料理は
殺しの味」が入っていたこと。こんなところでこの本と再会するとは(苦笑)。

オチの一行は好きだな。ちょっと微笑ましい。これから彼(?)が俊一郎の相棒になっていくの
でしょうね。
まぁ、続きを読むかは図書館次第、ということで・・・^^;