ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

水野敬也/「夢をかなえるゾウ」/飛鳥新社刊

水野敬也さんの「夢をかなえるゾウ」。

有名実業家のパーティで、セレブな人々と平凡なサラリーマンの自分との落差に自暴自棄になって
いた僕の前に突如現れたゾウの神様『ガネーシャ』。関西弁で自分大好きなこのへんてこな神様が
僕の夢を叶えてくれる!?怪しい発言を連発するガネーシャに半信半疑になりつつ、出される課題に
従っていく僕だったが・・・涙と笑いの「ためになる」エンターテイメント小説。


一言メッセージの『私らしくないベストセラー』はこれのことでした(あれ、誰も気にしてない?^^;)。
義姉が図書館で予約して借りたのを回してもらいました。ベストセラーになっていて、面白い
と評判なので気にはなっていたけど、自分で予約してまで借りる本ではないのでラッキーでした。

ベストセラーになるのがよくわかるようなわかりやすさと読みやすさ。ゾウのガネーシャのキャラ
がとにかく面白い。ダメダメサラリーマンの主人公との掛け合いについつい笑ってしまいました。
ツッコミどころは満載。そもそもインドの神様なのに、何故か関西弁だし^^;でも、ガネーシャ
のキャラには関西弁がぴったり。性格も完全に大阪のおばちゃんみたいなところあるし。
あんみつが大好きとか、妙に涙もろいとか、打たれ弱いとか、ジェットコースターが大好きとか、
ほんとにお前神様か!とツッコミたくなりつつ、なぜか憎めないガネーシャのキャラが良かったです。
性格は完全に駄々っ子みたいなガネーシャですが、主人公に与える課題や教訓の言葉には思わず
納得させられてしまう深さがあります。『変わりたいけど、変われない自分』に身に覚えのある
人間としては、かなり身につまされる言葉が多かったです。ガネーシャの課題はどれも『誰でも
出来るけど、実際はなかなかやらない』ことばかり。思っているだけじゃなくて行動してみる。
それがどんなに難しいことか。それでも、それをやらないから自分も含めた多くの人間は成功
しないんだろうなと耳が痛くなる思いがしました。ガネーシャの言う課題を全部こなしたって、
成功する人なんかほとんどいないだろうとは思う。でも、一つ一つの課題は人間が生きて社会で
生活する上でとても大切なことばかり。全部が全部やれなくても、その中で一つでも二つでも
実践できれば何かが変わるような気になりました。まぁ、だからといって明日から靴磨きを
したり募金したりはしないと思いますけど^^;;

自己啓発本というよりは、前向きになれるエンターテイメント小説といった方が良さそう。
キャラや文章の軽妙さで楽しく読めて、ラストはちょっぴり切ない。ガネーシャがちょっと
づつ薄くなって行っちゃうくだりは、どこぞで見かけた設定のような気もしますが、何だか
とても寂しい気持ちになりました。特に主人公との別れのシーンにはジーンとしてしまいました。
完全に透明になってもあんみつを頬張る食い意地の張り方がガネーシャらしい(苦笑)。かつら
だけが宙に浮いている光景も想像するとかなり滑稽で笑えました。

この本を実践して成功するとはあまり思えないのですが(苦笑)、ガネーシャの教えを実行
すれば人間的な成長を遂げられることは間違いのない所なのではないかと思いました。
毎日、感謝する。一番大事な人を喜ばせる。やらずに後悔していることを今日から始める。
他にも胸にずしりときた教訓がたくさんありました。
どれもが簡単なようでいて難しい。大切なことを忘れずに、明日も頑張ろう。

もうすぐドラマ化もされるようですね。主人公は今をときめく(笑)若手俳優小栗旬君で、
ガネーシャは個性派俳優古田新太さん。ああ、なんとなく納得って感じです。小栗君はドラマ
「ボンビーメン」で貧乏だけど底抜けにポジティブシンキングな好青年を好演していて、三枚目役も
はまってましたし、古田さんはクドカンのドラマなんかに良く出演されていて、画面にいるだけで
強烈な印象を与える素晴らしい俳優さん。これはなかなかドラマも面白くなりそうな予感がしますね。
二人のかけあい漫才みたいな会話だけでも楽しめそう。楽しみにしていよう^^