ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

福田栄一/「晴れた日は、お隣さんと。」/MF文庫刊

福田栄一さんの「晴れた日は、お隣さんと。」。

社会人一年目として春から郷土資料館の事務職に就職が決まった菜美。新居への引越し作業も終わり、
部屋で一息ついていると、窓から隣家の庭にいる不審な裸の男を目撃する。警官に報告すると、
その男性は菜美のお隣で塾を営んでいる元大学教授の『先生』だと教えられる。風変わりだが、
子供のように無邪気でのんびりとした先生の人柄に癒される菜美だったが、家族とは別居しており、
大学を辞めた理由にも何か秘密がありそうで・・・!?『ダ・ヴィンチ』掲載作品プラス書き下ろし
を収録。


秘かに著作を追いかけている福田さん。ものすごい『当たり!』っていうのはないのだけど、
人物造詣やのんびりとした作風が自分の好みで作品を見かけると嬉しくなって借りてしまう。
本書は始め本屋で見かけて買おうかものすごく悩んだ作品。図書館では文庫はあまり入れて
もらえないので、読みたい場合は買うしかないのです。んで、結局その時は散々悩んだ挙句に
買わずに帰ったのだけれど、目出度く図書館入荷。買わないでおいて良かった^^;

舞城さんの後の疲れた脳で読むには最適の作品でした。のんびりゆったり、構えずに読めて
肩の力が抜けました。文章の読みやすいことったら!ページがさらさらと進むってなんて
素晴らしいんでしょう。深く考えずに読めるって素敵!とかにこにこしながら読みました
(いや、舞城さんは舞城さんで大好きなんですけどね。少々食傷気味ではあったので^^;)。
各キャラクターの人物造詣も福田さんらしくて良かった。なんといっても菜美の『お隣さん』
の増渕先生のキャラがほのぼのしてていい。陽だまりの中にいるみたいに温かみがあって
やさしくて、楽しくて。悩んでることや辛いことも真剣に聞いてくれて、親身になってくれる。
こんなお隣さんがいたら私も茶のみ友達になりたい!って思います。
そして、菜美が心惹かれる康孝青年がこれまたいい男で、菜美がめちゃくちゃ羨ましくなり
ました。ずるい、ずるいぞ、菜美!郷土資料館の鍵を失くした菜美の為に一晩中建物の前で
見張りをしてくれるなんて、こんないい人いないよー!って思ってたら、ラストである事実が
明かされて、あー、なる程ねぇって思いました。ふーん。ごちそうさまっ!まぁ、こういう
ベタな展開も好きですけどねっ(単なる僻み根性^^;)。

増渕の過去の事件がこの作品の一番盛り上がる部分なんだろうと思うのですが、弱冠拍子抜け
するくらいあっさり解決しちゃいます。そして、そこが実に福田さんらしい。ハードな展開に
なりそうでならないゆるさが福田流(と個人的には勝手に思っている)。そのゆるいシチュ
エーションを楽しめるかどうかでこの作家への評価は変わって来るのではないかな。私は
もちろん楽しめるほうです。

しっかりした骨太のミステリを読みたい人には食い足りないと思いますが、肩の力を抜いて
お茶でも飲みながら気軽に楽しめる一冊です。ほんわかできました^^

ところで、村崎友さんの巻末エッセイ。これ、完全に福田さんへの告白ですよね?
いや、もう、ほんと、こっちが赤面しちゃったわ。だってタイトルからして・・・きゃーー!
本編の恋愛部分よりも興奮したかも(笑)。
どうも洒落に思えないぞ。村崎さん、結構本気なんでは。私も言いたい。

「ふたり、付き合っちゃいなよ!」

一年後には二人の結婚ニュースがとびこんでくるかも!?(笑)。