ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

レオナール・フジタ展

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日本人でありながらも、フランス人レオナール・フジタとしてその生涯を終えた数奇な異邦人、
藤田嗣治。今回、独自のスタイルを確立し、大画面の構成に挑んだエソンヌの大作群を中心に、
「すばらしき乳白色」と世界が絶賛した裸婦群を展示。また、アトリエ・フジタに残された豊富な
生活資料や作品も日本で初公開される他、キリスト教改宗後、「レオナール・フジタ」として生涯を
賭けて挑んだ、ランスの「平和の聖母礼拝堂」とそのフレスコ壁画の習作群も世界初公開。


楽しみにしていたフジタ展。雨が降って寒い中行って来ました。前回の竹橋での大々的な回顧展
の時は平日の午前中に行ったにも関わらずものすごい人だったので、今回も結構混んでいるのでは
と予想して、午前中を狙って行ってきました。それが幸いしたのか、平日だったからなのか、
思った程混雑しておらず、割とゆったりと観ることができました。

フジタといえば、『素晴らしき乳白色』と称えられる白の使い方。この白の出し方はどうやら本人が
門外不出にしていたようで、専門家でもどうやって作っていたのかあまりわかっていないらしい。
それだけに、絵画修復もかなり大変そうです。今回目玉の世界初公開の4枚の大作は長らくどこぞ
の倉庫に仕舞われ保存状態もかなり悪かったようで、絵画修復の専門チームでも相当気を遣って
修復をしたそう。その模様が映像で紹介されていたのですが、修復の過程を観ているのは
面白かったです。元絵を損ねちゃいけないし、気が遠くなるような細かい作業だし、大変な職業
ですよねぇ。面白そうではありますけど。

タイトルは『レオナール・フジタ展』になってますが、改宗して藤田嗣治の名を捨てた後の
絵よりも、日本人画家・藤田嗣治の絵の方がどちらかといえば多かったように思ったのですが。
ただ、改宗後の絵はどれも強烈な印象を残すものでした。色彩も濃くはっきりしたように感じ
たのですが、これは別に改宗とは関係ないのかな。フジタが設計を手がけたランスの「平和の
聖母礼拝堂」はいつか是非訪れてみたい教会です。細部の装飾も壁画もステンドグラスも全てが
フジタの手によるもの。さぞかし壮観だろうなぁ。

フジタは手先が器用だったみたいで、何でも自分で手作りしちゃうところがすごい。しかも
デザインがとっても可愛い。部屋の衝立、鏡、道具箱、裁縫箱、風見鶏、お皿のデザインetc...。
フジタが住んでいた部屋の写真が展示されていたのだけど、ほんとにシンプルだけど女の子が
好きそうな可愛らしい部屋で、なんとなくフジタの性格が透けて見えるような気がしました。
奥さんが4人だか5人だか変わっているのに、一人も子供がいなかったというのがとても意外
なのですが、子供がいないからこそ、子供の絵をたくさん描いていたのかな。『フランスの富』
の連作はフジタらしくてやっぱり見ごたえありましたね。私が初めてフランスで観たフジタの
絵もこの手の子供の職業の連作で、それを観てヒトメボレしたんでした。あとはやっぱり今回
一番印象に残ったのは『花の洗礼』かな。降り注ぐ花と三人の美女が美しくて、しばし
見入ってしまいました。

実は上野の森美術館はあんまり好きじゃない。なんか作りが変わってて、いつも観づらい感じが
する。でも、フジタの絵は良かったから満足。竹橋の時よりは見ごたえがなかったけど、
幻の大作も観れたし、改宗後の宗教画も綺麗だったし(最後のアポカリプス三連作は怖かった
けど^^;)、いい展覧会でした。



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「ライオンのいる構図」
幻の4連作の一枚(のうちの一部)。とっても大きい絵です。



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「争闘Ⅰ」
これも4連作の一枚(のうちの一部)。『闘争』じゃないのね^^;むきむきの裸体が
生々しかったです。



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フレスコ画の習作が壁に描かれたアトリエ・フジタの室内」
本当にフジタ自身が使ってた家具や画材道具を持って来て再現したそうです。こんな場所で
名画たちが生まれたのか~と感慨もひとしおでした。



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「花の洗礼」
これは本当に美しい絵でした。右側の女性の全身タイツが気になりましたが・・・^^;;




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ランス「平和の聖母礼拝堂」外観
虹が綺麗に出てますね。ちっちゃい教会っぽいけど、いつか訪れてみたいです。



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[聖チェチリア](再制作されるステンドグラス)
わざわざこの展覧会の為に、ステンドグラス工房で再現させたそうです。
展覧会終わったらどうするんだろ・・・??




実は私はフジタの絵を初めて観たのがフランスだったし、日本政府とは折り合いが悪くて
酷い扱いを受けたりして確執があったから、フジタの絵ってあまり日本にないと思っていたの
ですよね。
でも、フランス政府から莫大な額の税金を請求され、お金に困ったフジタは日本で自ら
展覧会を開いて自分の絵を売ってお金を作っていたらしく、結構日本には彼の絵が多く
所蔵されてるようですね。今回の展覧会も日本所蔵のものがたくさんありました。




フジタ展を観た後はスペイン料理店で昼食を食べ、友人と別れて私はまたしても美術展の
はしごの為に渋谷に移動。
友人も誘ったのだけど、レーシック手術をしたばかりで眼をあまり酷使できないとのことで、
一人で観に行くことに。もう一つの展覧会(アンドリュー・ワイエス展)についてはまた後日
記事にする予定です。


フジタ展は来年(’09)1月18日まで。フジタの素晴らしき乳白色の世界、是非観に
行ってみてください。