ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

桜庭一樹/「桜庭一樹読書日記 少年になり、本を買うのだ。」/東京創元社刊

桜庭一樹さんの「桜庭一樹読書日記 少年になり、本を買うのだ」。

稀代の読書家作家・桜庭一樹が〈Webミステリーズ!〉で一年に亘って掲載し、大好評を博した
読書エッセイを書籍化。


前回読んだ『書店はタイムマシーン』が面白かったので、懲りずに第一弾も借りてみました。
情けないことに、こちらもほとんど読んでる作品がありませんでした・・・。一応、たまーに
出て来る国内ミステリだけはほとんど既読でしたが。といっても、出てくる本の中のせいぜい
2~3%程度だけどさ・・・。
桜庭さんの本に対する情熱は本当に感心を通り越して呆気にとられます。本を読む時の桜庭さん
は、小さな子供がお気に入りのおもちゃを前にしてはしゃぐかのようです。どんな本でも面白く
読めてしまうというのは、やっぱり根っからの本好きなんだろうなぁって思います。苦手だった
本のことは紹介してないだけかもしれないけど、それにしても本書に出て来る本のほとんどが
好意的な感想で語られていて、『本』という存在自体への愛を感じます。京極さんみたいに、
『どんな書物も面白い要素がある(この世に面白くない本などない)』と思える人なんだろうな。
どんなジャンルでも躊躇せずに手を出して『面白い』と思えるのですもの。本への好奇心が旺盛
というか。前回同様、今回も桜庭さんの読書熱にノックアウトでした。

海外作品に関してはさっぱり話についていけずほぼ流し読みに近かったのですが、嬉しかった
のは、ミステリフロンティアで好きな作品に東川さんの『館島』と大山誠一郎さんの『アルファ
ベット・パズラーズ』が挙げられていたこと。私も個人的に気に入っている二冊なので。
『館島』みたいなトリックを桜庭さんが好きだとはちょっと意外でしたが。

それにしても、桜庭さんは一体年に何冊の本を読んでいるんでしょうか。昼間本を買いに行って
帰って来て読み始めて、寝るまでには読み終えているのだから、読むのも早いんでしょうねぇ。
驚いたのは皆川博子さんの『薔薇密室』をおそらく一日で読み終えていること。あんな分厚い本、
どうやったら一日で読めるんだ一体。ものすごい集中力で読書してるってことなんだろうなぁ。
皆川さんとの初対談では、がちがちになって変なテンションになってる様子が伝わって来ました。
一体、どんな対談内容だったんだろ。読んでみたいなぁ。やっぱり、マニアックな読書対談に
なってるのかな。

桜庭さんの担当者、東京創元社のK島さんの読書知識もすごいです。編集者なんだから当たり前
なのかもしれないけど、それにしても桜庭さんとの会話について行けるだけでなんだか尊敬
してしまう。ミステリフロンティアを立ち上げたという位の人だからやっぱりすごい人なんで
しょうけど、本以外のことに関してはかなりくだらないことを言ったりして、桜庭さんとの会話は
漫才みたいに面白い。なんだかいいコンビだなぁって感じです。でも、こんな風に自分の好きな本
の話で盛り上がれる人が身近にいるっていうのは羨ましいですね。私の友人も本好きの人はいる
けど、そんなにずっとは付き合ってくれないもんなぁ。日がな一日、ただ本の話だけして終わる
っていうの、やってみたい。桜庭さんじゃないけど、単なる本バカに成り下がって、好きな本の
魅力やこれから読みたい本のことについて、語り明かす。恋愛話も、世間話も一切なし。
・・・考えただけで、幸せ(残念ながら付き合ってくれるひとは、いないけどね・・・)。
まぁ、幸いなことにブログを始めて、たくさんの本好きさんと出会えて恵まれているなぁ
と思いますけれど。桜庭さんは極端例だけど、世の中には自分以上にたくさんの本を読んでる
人がいてびっくりします。桜庭さんみたいに、どんな本読んでも楽しめるようになるには
まだまだ修行が足りないけれど、私ももっともっと読まなくちゃ!

・・・なんて、なんだか異様に読書欲に駆られるエッセイなのでした。