ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

高田崇史/「カンナ 飛鳥の光臨」/講談社ノベルス刊

高田崇史さんの「カンナ 飛鳥の光臨」。

伊賀忍者の末裔である鴨志田甲斐は、大学卒業後に跡継ぎ問題に嫌気がさして家を出てしまった
長男・翔一の代わりに出賀茂神社の跡取りとして、日がな気楽に暮らしていた。ある日、神社に
泥棒が侵入し、宝物殿に仕舞ってあった社伝が盗まれてしまう騒ぎが起きた。その社伝には歴史
の根幹にかかわる重大な秘密が書かれていた。同じように飛鳥にある出賀茂神社でも盗難騒ぎが
あったらしい。父・完爾の命令で、様子を伺いに飛鳥に飛ぶことになった甲斐だったが、飛鳥で
起きた不可解な殺人事件に巻き込まれ、同行した現役東大生の巫女アルバイト・貴湖と供に、事件
の真相を追う羽目に――。


高田さんの新シリーズ。出たばかりだと思っていたら、すでにもう二作目も出てるんですね。
同時に出た訳じゃないですよね??新刊はまだ図書館入荷してないだろうなー^^;題名や
書店で見かけた表紙の雰囲気から、もっと壮大な歴史小説なのかと思っていたのですが、
蓋を開けてみたらQEDより更にライトな歴史ミステリーでした。ノベルスなのに一段組みの
せいで文章も少ないせいか、あっという間に読み終わってしまった感じ。しかし、現実の
殺人事件と歴史のミステリーを融合させるというスタイルはQEDシリーズと全く同じ。正直
言って、何故わざわざ新シリーズを立ち上げる必要があったのか疑問です・・・別に同じ
内容をあっちのシリーズでやっても全く差し支えないと思うんですけど。歴史にそれほど
詳しくない主人公の側に、やたらに歴史に詳しい薀蓄好き人間がいるという体裁も一緒(
それぞれの性別は逆ですが)。唯一の相違点と云えば、主人公を始め、関係者が忍者の末裔
ばかりということですが。あれ、それが重要なのか?^^;しかも主人公の鴨志田甲斐は、
QEDシリーズにタタルさんの友人として出て来た鴨志田翔一の弟。本書ではあちらのシリーズ
との直接的なリンクは出てきませんが、今後はタタルさんたちが登場する可能性もありそうです。

本書のテーマは聖徳太子聖徳太子に関する仰天の新事実を打ち立ててます。実際こういう説が
学術的にあるのかどうかは知りませんが、かなり荒唐無稽な仮説で面食らいました。うーむ、
もしこれが万が一にも事実だったら、今まで学んで来た歴史は何だったんだーー!って叫びたく
なりますね。まぁ、確かに書物だけでしかその時代を証明するものはないのだから、こういう
事実があって、それが書物の上で捏造されていても全く不思議はない訳ですが。ううむ。私も
事実関係を調べに奈良に行きたくなりました(奈良は行ったことないから一度行ってみたいのよ)。

密室事件の真相は相変わらずつけたしのようなひねりのなさ。トリックはあまりにも使い古された
手法で意外性もなかったし。殺人が起きている割に、全体的に緊迫感がないのもちょっと
どうかと思いました^^;まぁ、私はミステリ部分は高田さんにはあんまり期待してないので、
そんなに不満には思わないですけど。

失踪した諒司のことも曖昧なままだし、甲斐の見合い相手の聡美のこともうやむやな状態だし、
いろんなことが中途半端なまま終わっているので、続きが気になります。早く入れてくれないかな。

QEDシリーズよりは気軽に読める歴史薀蓄ミステリーです。飛鳥時代とか聖徳太子好き
(いるのか?^^;)ならば一読の価値があるのではないかな。太子が10人の声を聞き分け
られたというエピソードは有名ですが、それについての新解釈なんかも面白く読みました
(事実であるかどうかは置いといて)。高田さんって、ほんとに歴史が好きなんだろうなぁ。
歴史オンチ人間としては、毎回勉強不足、知識不足で自分が情けなくなります。勉強しなきゃ^^;