ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

有川浩/「阪急電車」/幻冬舎刊

有川浩さんの「阪急電車」。

阪急電鉄今津線。片道わずか15分のローカル電車が動き出す時、乗り合わせた人々の間にもまた、
新たな物語が生まれる――電車を舞台に広げられる人間模様を描いた連作集。


『別冊図書館戦争機抂瞥茵久々の有川作品(『別冊~』も記事にしてないけど^^;)。
読む作品読む作品全てが自衛官恋物語で、少々食傷気味で他の作品を読む気になれずに
いたのですが、本書は自衛官とは無関係らしいし、どのレビューを読んでも絶賛しか見かけ
なかったので、ずっと読みたいリストに挙がってました。先日図書館の開架で見かけてラッキー
とばかりに借りてみました(ちなみにその前に見かけた『ラブコメ今昔』は中身をぺらぺら
めくって華麗に(!?)スルーしました^^;一応別冊図書館~の兇世韻脇匹發Δ隼廚辰討い
けれど)。

うんうん。これはかなりツボにきました!おんもしろかった~。多分大阪に住んでる方や
大阪に詳しい方ならもっとツボにはまるんだろうなーとは思いましたが、阪急電車の知識の
ない東京人の私でも充分楽しめました。たった15分間の電車の中で起きる悲喜こもごも。
最近電車をモチーフにした短編をいくつか読んでるけれど、身近な題材なだけにリアリティが
あってどれも面白い。そしてどの作品でもマナー問題は必ずついて回りますね。偶然同じ
電車に乗り合わせただけで、普通は二度と出会うこともない人と繋がって行く過程がとても
良かったです。電車の中で大声で話すおばちゃんや、友達の為に席取りをする女子高生の頃の
ミサの話などはかなり身につまされるものがありました。私もさすがにそういうのはしない
けど、知らずにマナー違反をしてしまって気付かないまま過ごしていることがあるかもしれない。
私も大人になったミサのように、おばちゃんたちを『恥ずかしい』と思う側にいると思っている
けれど。ミサは間違いを指摘してくれる人がいて、それをちゃんと受け入れて間違いを指摘
できる側に立てたのだから、偉いと思う。最近はマナー違反を指摘したらキレる若者が多い
と聞くし、やっぱり見知らぬ人から注意されたら誰だって反発心は芽生えると思うから。
マナーを守るって、簡単なようでいて結構難しいなって思います。電車に乗る時は気をつけ
なくちゃ(いや、電車に限らずどこでもだけど^^;)。

あれ、なんか話がそれちゃった^^;複数の登場人物が重複していて、少しづつリンクして
行くところがすごく上手いし、それぞれのキャラ造詣がまた絶妙。個人的に好きだったのは
翔子さんとミサと時江おばあちゃん。あ、みんな女性だ(笑)。男性だったらパンク青年の
圭一君が好きかな。彼女いない歴=年齢、とか正直に初対面の女の子にぶちまけちゃうとこが
なんとも可愛いじゃないか(相手の美帆ちゃんも同じくらい天然で可愛いけど)。有川さん
らしいバカップルなこの二人のエピソードは読んでて微笑ましい気持ちになりましたね。

翔子さんの討ち入りに関してはもう、個人的にはかなり爽快でした。新婦のやったことを
考えたら、誰だって翔子さんに肩入れして読んでしまうのではないかなぁ。多分、やり遂げた
翔子さんが一番傷ついてる本人だし、自分のしたことがえげつないことだってこともわかってる
から、彼女の行動に嫌悪感なんて覚えなかったです。実は似たようなこと、昔やられたことあるし
(ってこんなとこでぶっちゃけてどうする^^;;)。きっと翔子さんみたいに反撃してたら、
その後の気持ちとかも違っていたんじゃないかって今なら思う。翔子さんと時江おばあちゃんの
電車での会話がまた良かったですね。時江おばあちゃんがまためちゃくちゃかっこいい人で。
子供に対しても最低限のモラルを通す姿勢が好きです。譲れないことを譲らないところも。孫に
対してはどんな祖父母だって甘くなっちゃうと思うのだけど、彼女は妥協しない。そこがすごく
好きでした。翔子さんとミサのシーンも好きでしたね。二人が喫茶店でどんな会話を繰り広げる
のか、その後どんな風に齢の離れた友人として仲良くなって行くのかも読んでみたかったな。

カップル部分はどれも有川さんらしいベタ甘モードで、読んでるこっちが赤面しそうでした(苦笑)。
たった片道15分の中に、いろんなドラマが詰まってて、ほんわか温かい気持ちになりました。
偶然乗り合わせた同じ電車の中で起きるささやかな出来事が、大切な出来事に変わって行く。
電車の中には乗り合わせた人の分だけ、たくさんの人生やドラマが詰まってるんでしょうね。
関西弁の会話の雰囲気も良かったです。えっちゃんの彼氏の話はミサ同様読んでて噴出して
しまいました(笑)。おバカだけど優しい彼氏。大切にされてていいなぁ(羨)。
全体のローカルな雰囲気もとっても良かった。

やっぱり、有川さんは軍事関係から離れた方が絶対いいと思うな・・・。こういう作品、もっと
書いて欲しいです。装丁も可愛らしいし、お気に入りの一冊になりました^^