ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

誉田哲也/「武士道セブンティーン」/文藝春秋刊

誉田哲也さんの「武士道セブンティーン」。

剣道を通して心が通い合えた早苗と香織だったが、突然の早苗の転校で離れ離れになることに。
父親の仕事の都合で福岡の剣道の強豪高に通い始めた早苗だったが、そのことを香織に連絡
できずにいた。一方香織は、早苗からの連絡が来ないことに忸怩たる思いを抱きながら、意固地に
なり自分から連絡することを避けていた。それぞれの場所でそれぞれの剣道を磨く二人。しかし、
早苗は転校先の福岡南の剣道がどうしても受け入れられず、悩んでいた。そして、インターハイ
の会場で、二人はついに再会するのだが――。正反対の少女二人の成長を描いた痛快武士道物語、
第二弾。


という訳で続けて続編も借りてみました。うんうん。良い良い。前作のラストとリンクしていて、
離れ離れになってしまった二人が再会するまでにどうしていたのか、早苗が転校してから何故
香織に連絡をくれなかったのか、何故剣道をやめて日本舞踊をやるなんて嘘を吐いたのか、その
理由が語られ、すっきりしました。早苗もいろんな葛藤があったんですねぇ。福岡南の柔道が
受け入れられずに悩み、東松に帰りたいと弱音を吐く彼女の姿に、切ない気持ちになりました。
転校して一人心細かったんだろうなぁ。誰も知ってる人がいなくて、言葉も違って、剣道の
スタイルも違って。私は転校ってしたことないから実感できないけど、同じ状況になったら
やっぱり心細くて孤独で泣きたくなっちゃうかも。そんな早苗の微妙な心の動揺を電話の様子
だけで察知して元気づけようとする香織。ああ、成長しているなぁって嬉しくなりました。
福岡南の剣道に染まらず、最後まで自分の剣道を貫いた早苗も素敵でした。中盤まではなかなか
二人に接点がないから、「いつ再会の剣道大会があるんだ!?」ってやきもきしながら読み
ました(苦笑)。前作のラストの二人の再会、早苗の「みぃーつけたっ」のシーンまで来た時は
何故かちょっと感無量な気持ちに(笑)。この一言には多分、早苗のいろんな思いが詰まって
いたのだろうなぁ。それまでの彼女の孤独な心の葛藤を知った上で、再びこの場面を読むとまた
違った印象がありました。離れたからこそ、お互いに与えあえるものがある二人。なんだか
やっぱり、とても羨ましい。早苗にはレナが、香織には美緒が側にいるようになったけれど、
やっぱり早苗と香織の関係は特別だと思う。

スポーツとしての剣道と、武道としての剣道。どちらがいいのか剣道をやらない私には
判断できないけれど、やっぱり武道としての剣道の方が素敵だ。最近いろんな日本のお家芸
と言われるスポーツの国際大会を見ていると、どんどん武道からはずれて行っている気がして
悲しい。柔道なんて、レスリングみたいだし。国際的になって、ルールが変わって行くのは
仕方のないところだとしても、やっぱり本来の武道の精神を忘れてほしくない。見てても
楽しくないもの。香織や早苗が目指す『武士道』を貫いた試合はきっと、見ていても清清しい
気持ちになるんじゃないかな。終盤で、香織が清水や美緒の為に不良たちと戦うシーンも、
あくまで『武士の戦い』を貫いた彼女に爽快な気持ちになりました。ほんと、香織はオトコマエ
だ・・・こんなのやられちゃったら、美緒や清水じゃないけど、「ついて行きます!」って
言いたくなっちゃうよなぁ。そういえば、清水のキャラは前作読んだ時に前半で意味深に出て
来た割に中盤以降ぱったり出て来なくなって、放り投げられたまんまだったなと思っていたので、
今回再び出て来て「こういう役割だったかー」と思いました。まさかここまで情けないキャラに
成り下がるとは思いませんでしたが^^;

香織に関してはドキリとするようなエピソードもありましたが、最悪の事態にならなくて
ほっとしました。これですごく暗い展開になってしまうのかとちょっと心配したので^^;
重大な事件があっても変わらない彼女のキャラに救われた気になりました。内心はいっぱい
動揺したと思うけれど。本書を読んで、ますます彼女にファンになってしまった。

ラストは少し個人的には残念な展開ではありましたが、早苗の選択は潔く、応援してあげたいと
思う。楽な方に逃げなかった彼女は偉い。それに、二人の関係は離れていたってゆるぎないし、
かえって離れてそれぞれの剣道がどう変わって行くのか、対戦シーンが楽しみにも思えますし。
エイティーンになった二人がどう成長を遂げているのか、続編を読むのが待ち遠しいです。

本当に清清しい素敵な青春小説。前作以上に楽しいエンターテイメントになっていて、今回も
没頭して読んでしまった。あー、楽しかった。

今回も紅白のスピンが二本。表紙が青なのでトリコロールのよう(笑)。次は何色かな?
黄色か緑あたりでしょうか。それも楽しみ^^