ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

万城目学/「プリンセス・トヨトミ」/文藝春秋刊

万城目学さんの「プリンセス・トヨトミ」。

大阪市空堀中学に通う大輔は、女の子になりたいと幼少の頃から願っていた。そして中学二年の
ある朝、ついに決意をしてセーラー服で登校する。その日から、学校のワルたちに狙われ、いじめを
受けることになってしまった大輔。そんな彼が、幼馴染の茶子は心配で仕方がない。そんな大輔たち
の前に、東京から会計検査院の三人の調査官がやってきた。彼らの目的とは――?そして、五月末日
の木曜日午後4時、大阪が全停止した。その背景に隠された真の大阪の姿とは――!?大阪を舞台に
繰り広げられる驚天動地のエンターテイメント。


万城目さんの新刊。とっても楽しみにしていたのだけど、正直私にはちょっとピンと来なかった^^;
というか、とにかく冗長。もともと歴史ものが苦手なので、大阪国の成り立ちとか豊臣家との
繋がりの辺りの説明を読むのが苦痛で苦痛で。何度文章を読んでも頭に入って来なくて参りました。
一つ一つの要素も、どうも物語に生かしきれていないというか、中途半端というか。大輔の
性同一性障害の設定も必要だったのか疑問だし。タイトルの当のプリンセスも大阪の男を総動員
させた割にほとんど活躍してないし。そもそも大阪国と対立する相手が政府の会計検査院という
時点でどうなのかなぁと首をかしげました。もっと違う設定なかったのかなぁ・・・。肝心の対決
シーンもあっけない幕引きだったし、そこまでの展開が長かっただけに、なんだかかなりの肩透かし
を食らった気分でした。
大阪国自体の存在も、ちょっと荒唐無稽すぎてついていけなかったです。どうやったって、この
方法だとどっかから秘密が洩れそうな気がするんですが。大阪人は口が堅いんや!!(エセ大阪弁
とかって反論されちゃうと返す言葉がないんですけど・・・。でも、全員が全員口をつぐむって
のはどうも信憑性に欠けるというか。各々、最初から役割が決まっているっていうのもご都合主義
って感じがしました。

登場人物のキャラ造詣は良かったです。特に会計検査院の三人はそれぞれに個性的で、彼らの間の
会話は面白い。ただ、鳥居と旭は私の中ではなぜか海堂さんのバチスタシリーズの白鳥と姫宮
に重なっていたのですが・・・^^;松平は近い将来絶対○○病になりますね・・・一日一個に
しておけよ~!ってツッコミたくなりました(苦笑)。外見に似合わないこういう嗜好は好感
もてましたけどね。でも、年齢的にもほどほどにしないとヤバイですよね(苦笑)。

登場人物の苗字が歴史上の武将の苗字になっているらしいのですが、歴史オンチの私はほとんど
気付かずに読んでました^^;松平くらいはわかりますけど・・・。鳥居とか旭もそうなのかな?
(でも旭って名前だよねぇ。ゲーンズブールっていったらシャルロット・ゲーンズブールしか
思い浮かばないぞ)。真田はともかく、橋場もよくわからないや。誰?

やっぱり個人的には大輔サイドの話をもう少し掘り下げてほしかった。セーラー服着ただけで
満足しちゃうってのはどうも。それに、女の子になりたいって願ってるくらいなら、もっと真剣に
ダイエットして可愛くなりたいとか思うものじゃないのかなぁ。なんで小太りなんて設定にした
んだろう。毎日お参りするより痩せる努力しろよと言いたくなりました。外見描写を読むと、
痩せたら可愛くなりそうな感じがするんだもん。色白だし。やっぱり、お好み焼きの弊害は大きい
のか?真田父のお好み焼きが食べたい・・・。

これの前に読んでた貫井さんも500ページを超える大作でしたが、ほぼ同じページ数のこちらの
方が読む気力が倍以上必要だった気がします^^;この内容なら300ページ前後で纏めて
ほしかった。帯の『最高傑作』はどうなんだろう・・・。私はホルモーの方が好きだなぁ。

うーん、辛口ですみません。面白くなかった訳じゃないのですが。会話文やキャラはマキメさん
らしく軽妙で楽しめましたし。ただ、全体的な冗長さがマキメ作品のテンポの良さを削いでしまった
点が残念でした。