ミステリ読書録

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東野圭吾/「放課後」/講談社文庫刊

東野圭吾さんの「放課後」。

転職して私立清華女子高の教師になった前島。教鞭を取って5年が経った最近、自分の命が狙われる
と感じる不審な出来事が続いていた。前島は、大学時代の経験からアーチェリー部の顧問を任されて
いる。ある日練習が終わり更衣室に入ろうとした部のキャプテン・杉田恵子が更衣室の戸が開かない
と言い出した。裏の換気孔から覗いてみると、戸に心張り棒がしてあるらしい。不審に思って二人は
戸を壊して中に入ると、男性教師が死んでいた。現場は密室。警察は捜査により殺人事件と判断した
ようだが、犯人はどうやって出て行ったのか――。そして、体育祭の仮装行列で更なる殺人事件が
起きる――第31回江戸川乱歩賞作品。


未読の東野作品を減らそうキャンペーン、ついに真打登場。って、いろんなところから『読んで
なかったのかよ!』ってツッコミがありそうですが、読んでなかったんですよ、これが。
記念すべき東野圭吾のデビュー作。以前にも記事に書いたことがあるのですが、初期の東野さんは
実はあまり好きな作家じゃなかった。当時ミステリにはまっていた姉が講談社文庫の東野作品を
何作も持っていたのでなんとなく読んでいたけれど、正直ピンとこない作品が多かったんですよね。
そんな訳で初期作品はどうも積極的に読む気がおきず、デビュー作もスルーしたまんまでした。
そうこうしているうちに知らない間に大ベストセラーになり、書架にはほとんどの作品が並ばなく
なってしまった為、読みたくても読めない状態に陥ってしまった訳なのでした。乱歩賞受賞作だし、
デビュー作だし、本書は最近では読みたい東野作品のトップ3くらいに入っていたのですが^^;
先日運よく本日返却棚に置いてあったのを発見。ようやく読めたのでした。

しかし、噂には聞いていましたが、この動機は何なんじゃーーー^^;;トリック等はオーソドックス
な本格という感じで、伏線もそれなりに張ってあって面白かったものの、動機には目が点。まぁ、
実は他の方の記事でその点だけはつい読んでしまって知っていたのですが、改めて作品を通して
読んだ上でこの動機を読ませられるとやっぱり『何ソレ』的な衝撃がありました^^;この部分を
修正させないでそのまま受賞させた乱歩賞もある意味勇気があるような気もしますが。

それにしても、デビュー作ということで文章もキャラ造詣も荒削り。書かれた時代が時代なのだから
仕方ないとはいえ、表現の古臭さにはついつい失笑。前に小峰元さんの『アルキメデスは手を
汚さない』を読んだ時とほぼ同じ印象を持ったのは、やはり東野さんがこの作品に多大な影響を
受けている所以なのか^^;
歴代乱歩賞作品と比べてさほど突出してる出来とも思わないですが、これが東野圭吾の原点
なんだなーと思うとやっぱり感慨深いものがありました。

問題児の高原陽子のキャラなんかは良かったですね。ただ、陽子にしてもアーチェリー部
キャプテンのケイにしても優等生の北条雅美にしても、ちょっと高校生にしては大人びすぎてて
リアリティに欠けるように感じました。それとも、書かれた当時の女子高生はこれ位大人びて
いたのかな?







以下ネタバレあり。未読の方はご注意下さい。














オチのある人物の行動に関しては、ちょこちょこ途中で伏線が張られているので、きっと何かが
あるだろうとは思っていのですが、最後の最後でこう来たか!という感じ。まぁ、弱冠唐突感が
なきにしもあらずですが、その後の東野作品に受け継がれて行くファムファタルの原点と云える
でしょうね。多分、少しづつ少しづつ、主人公への鬱屈がたまっていたんだろうなぁ。例の
出来事を境にして。『夜明けの街』のアノ人や、『聖女の救済』のアノ人を思い出しました。
確かに、主人公のしたことは罪深いことですね。身勝手な理由で生まれ来るべき命を消して
しまったのだから。しかも、独身同士ならまだわかるけど、結婚しているのに。恨まれても
仕方がないと思う。まぁ、殺されていいとまでは思わないけど^^;私が同じ立場でもやっぱり
恨むと思うな(こんな行動は取りませんけど^^;)。この後彼はどうなったんでしょうか。
やっぱり・・・。










そういえば、どなたかの記事で『初期作品はピエロが良く出て来た』ってコメントを読んで
ふーん、そうだっけ。って思ってたんですが(『十字屋敷のピエロ』くらいしか思いつかな
かったので)、ほんとに途中で出て来た時は『出たー』とちょっとウケてしまいました(笑)。
デビュー作から使っていたとは^^;

すごいなぁって思ったのは、この講談社文庫の初版は1988年なんだけど、私が読んだこの本自体は
2007年発行で第59刷!今現在はもっと行ってるでしょうね。さすがだ。東野さんの印税って
一体どれくらいなんだろう・・・想像を絶する額なんだろうな。

えー、キャンペーンは今後も続行予定です。でも、次は新刊が読めそうかな(二番手くらいだと
思うので、一月以内には読めるのでは・・・と楽観視したりして)。
未読作ってあと何冊あるんだろ。30冊はあるだろうなぁ・・・先は長い^^;