ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

小林信彦/「唐獅子株式会社」/新潮文庫刊

小林信彦さんの「唐獅子株式会社」。

二階堂組のヤクザ・黒田は、刑務所生活を終えて組に戻ると、組の名前が『唐獅子通信社』に
変えられていた。本家・須磨組の大親分が、シティヤクザへの変身を遂げる為、文化事業に
乗り出したというのだ。社内報の発行から、放送事業、映画産業、音楽業界・・・と次々
手を広げようとする大親分に黒田を始め組の人間は大わらわ。溢れるギャグとパロディを
盛り込んだ爆笑任侠コメディ小説。


先日読んだ今野敏さんの『任侠学園』の記事で月野さんに教えて頂いた任侠コメディ。
書架で見かけて面白そうだったので借りてみました。
なるほど、なるほど。月野さんがいかにも好きそうだな~って感じの(笑)、くだらないギャグや
パロディのオンパレード。書かれた時代が昔なので、正直ピンとこないパロディネタも
多かったのですが、その辺りは巻末で筒井康隆氏の詳細な解説があって有難かったです。

ヤクザが親分の好奇心から文化事業に乗り出して、組員たちが迷惑する・・・という展開は、
まさしく今野さんの任侠シリーズとそっくり。本書を読んで、あの任侠シリーズはこの作品を
下敷きに書かれたものなのかも、と思いました。任侠コメディの金字塔みたいな作品らしいし。
映画化も二回もされてるようですね。一回目はあの横山やすしが主演していたらしい・・・。

須磨組の大親分の思いつきのトンデモなさ、それに振り回される黒田たちとのやりとりが
可笑しくて、何度も噴出してしまった。会話文もテンポが良く、すいすい読めました。
オチがよくわからなかったのもあったんだけど・・・まぁ、あんまり深く考えず、シチュエーション
だけでも楽しめたからいっか(月野さんから抗議されそう^^;)。

今野さんのシリーズとの違いは、ほろりとさせるような人情部分はほとんどなく、ほんとに
ブラックユーモア的な作品ってところでしょうか。ぼんぼん人死ぬし。ギャグ満載なんだけど、
ヤクザの世界のことに関してはシビアな現状が垣間見えるというか。
可哀想なんだけどついウケてしまったのは大親分の飼い犬のブルドック。一話進むごとに
どんどん酷い状態に・・・^^;ヤクザに飼われたのが運のつきでしたね・・・。

ミステリ好きとしては七話の『唐獅子探偵群像』が面白かったです。密室殺人ですし。ちゃんと
オチにひねりがあって、ミステリになってるところがいいです。ちょっと意味がわからない部分
もあったんですけど^^;

いやー、面白かったです。続編もあるみたいなんで、読んでみたいなぁ。タイトルが『唐獅子
源氏物語って・・・タイトルだけでも面白そうです(笑)。

お薦めして下さった月野さん、ありがとうございました^^