ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

畠中恵/「こいしり」/文藝春秋刊

畠中恵さんの「こいしり」。

江戸は神田で八つの支配町を持つ古町名主の高橋家では、一人息子の麻之助がついに嫁を迎える
ことになった。妻となるのは武家の娘・野崎寿ず。しかし、目出度い筈の婚礼の席で、麻之助の
親友・清十郎の父にして隣町の町名主・源兵衛が突然卒中で倒れ、婚礼は延期に。倒れた源兵衛の
容態は、命は取り留めたものの芳しくなかった。そんな重病の源兵衛から清十郎は、昔、訳あり
だった二人のおなごを捜し出し、今どうしているのか確認して欲しいと頼まれる。清十郎は麻之助
と同心の吉五郎を巻き込み、二人の女性を捜し始める――(「こいしり」)。『まんまこと』
シリーズ第二弾。


直木賞候補になった『まんまこと』の続編です。今回、冒頭からいきなり町名主の放蕩跡取り息子・
麻之助が婚礼を挙げることになります。相手は前作で登場したお寿ずちゃん。恋仲になりそうだなー
とは思っていましたが、恋愛すっとばしていきなり夫婦になるとは、さすが江戸時代^^;放蕩を
繰り返す麻之助の言動を落ち着けさせるため、周囲がさっさと身を固めさせようと画策したせい
ではありますが。心にお由有さんの面影を抱えつつの婚礼なので、大丈夫かな~と少々心配に
なったのですが、案の定、所々で不穏な空気になりそうな気配が。そしてラストの『せなかあわせ』
でお寿ずちゃんからいきなりの三行半発言。来たかーと思いました^^;多分鋭い女の勘でちょこ
ちょこ麻之助の言動に不審を抱いていたんでしょうねぇ。ただ、完全なお寿ずちゃんの誤解から
発生した言葉で、その後麻之助と二人で調べ物をして行くうちに、夫婦の仲も縺れた糸がほどける
ように元に戻って行ったのでほっとしました。雨降って地固まる、の言葉通り、かえって夫婦の絆が
深まったようなラストに微笑ましい気持ちになりました。ちゃらんぽらんな麻之助にはお寿ずちゃん
みたいなしっかり者がぴったりですからね。この二人はなかなかお似合いのカップルだと思います。
お由有さんがああいう状態になると同時に麻之助が婚礼を挙げたということは、やっぱり二人は
結ばれない運命にあったということでしょう。麻之助にはすっぱり彼女のことは忘れて妻一筋に
なって欲しいものです。

物語の展開は相変わらずどれもゆるい。特に冒頭の『こいしり』からしてあまりのひねりのない
展開にがっくり。そもそも瀕死の状態で過去の女の現状を知りたいなんて、しかもそれを息子に
頼むってのはどうなんだ。若くて奇麗な奥さんもらっておいて。女二人が源兵衛に会いたがらな
かった理由も当たり前すぎて拍子抜け。もうちょっとストーリーを練りこんで欲しいなぁ。この
ゆるさが畠中さんらしさとも云えるのでしょうけど、私にはちょっと食い足りない。もう一歩
踏み込んで書いてほしいです。

前作ではいまいち活躍が少なかった印象の吉五郎ですが、今回はなかなか出番が多くて、他の
二人とのバランスも良かったと思います。前作よりも、それぞれのキャラの個性は出ているように
思いました。畠中さんの中でもキャラが確立されてきたのかな?

三人がそれぞれ引き取ることになった猫たち『みけとらふに』にはほのぼの。なんだかんだで
麻之助が『ふに』にメロメロなのが笑えます(笑)。名前のセンスはなんとかして欲しいですが^^;

今後はもしかしたらちょこちょこお寿ずちゃんも麻之助の裁定に加担していくのかな。彼女の方が
鋭い意見を言いそうな気もしますが。今後も麻之助は尻に敷かれて行くのでしょうね(苦笑)。