ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

霞流一/「ロング・ドッグ・バイ」/理論社刊

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霞流一さんの「ロング・ドッグ・バイ」。

俺はアロー。東京郊外の小さな町、浮羅田町でおっとり屋の夫妻に飼われている柴犬と洋犬の雑種だ。
背中の真ん中あたりまで矢のような白い模様が入っているからアロー。始まりは浮羅田公園の名犬
レノの銅像の前に突き刺さっていた四本のゴボウだ。昨日まではなかった筈なのに、突然出現した。
一体誰が何の為に?俺は気弱で幼い柴犬ボンタから調査の依頼を受け早速調査を開始したが、名犬
レノの幽霊の噂まで出て来て、謎は深まるばかり。その上、またしても浮羅田公園で奇妙な出来事が!
俺は、調査のエキスパート犬集団G8の手を借りて徹底調査に乗り出した――犬好きによる犬好きの為の
涙と笑いの犬版ハードボイルドジュヴナイルミステリー。ミステリYA!シリーズ。


昨年のこのミスで予告されていて楽しみにしていた霞さんのミステリYA!シリーズ。題名からし
バカミスの匂いがぷんぷんしているではないですか。本家の『ロング・グッド・バイ』は恥ずかし
ながら読んでいないのですが、こういう遊び心のあるタイトルは大好き。

さてさて、肝心の内容ですが、全篇犬視点で書かれた本書、とっても痛快な作品でした。ヤフー
ブログのお仲間さんは猫派の方が圧倒的に多いように思うのですが、リアルの友達は何故か
ほとんどが犬派。犬を飼っている友人同士が話し始めると、まったく中に入れなくて疎外感を
覚えることもしばしば。ただ、実際にどちらが飼いたいかと言われると、この場でぶっちゃけるのは
正直少々勇気が要るのですが、犬です。もちろん基本的には犬も猫もどちらも好きなのですけれど、
実は子供の頃から犬を飼うのが夢だったんですよね~。親がペットを飼うことを許してくれない家
だったので、結局金魚くらいしか飼ったことがないんですが。あ、あと親に隠れて(苦笑)こっそり
押入れの中でハムスター飼ったことがあったな。すぐ死んじゃったけど・・・(しかもすぐバレた
^^;)。

話が逸れました^^;んで、そんな犬を飼うのが憧れの私としては、いろんな犬が大集合した本書、
大変楽しく読めました。どんな犬を飼うかで悩む桐塚氏の気持ちはよーくわかります(笑)。私も
自分がいざ飼うってなったらさぞかし悩むだろうなぁ・・・。

バカミス作家の霞さんらしく、ぷぷぷと笑える要素もちょこちょこ挟まれています。犬の散歩を
ワン歩と言ったり、犬同士の言語をバウスと言ったり、楽しい犬用語も満載。ミステリとしては
当然のことながらゆるいしやっぱりバカミスに入るんだろうけど、個性的な犬たちがそれぞれに
生き生きとしていて、自分の特技を生かして捜査に協力するところはとっても痛快。最後は犬同士
の絆の深さも感じさせてくれて、読後も爽やかでした。主人公・・・じゃなくて主犬公(笑)の
アローを始め、彼の調査に協力するG8のメンバーたちがとっても渋くてカッコイイ。犬視点なのに、
きちんとハードボイルドミステリになってるとこがいいですね。事件の調査を通して、気弱な幼犬
だったボンタが成長していくところも読みどころの一つでしょう。

個性の強い犬たちに対して人間の方はいまひとつ印象が薄いキャラが多かったけれど、その中では
自称アーティストの平泉氏のキャラが良かったです。へらず口ばかりたたきながらも、温かな人柄が
にじみ出しているところが好きでした。

間に挟まれるイラストや装丁も犬に拘っていて可愛らしい。何より、作者霞さんの犬への溢れん
ばかりの愛情が感じられるのがいいですね。解説がまたとーっても微笑ましくて、霞さんの犬バカ
ぶりに笑ってしまいました。ご主人じゃなくて愚主人ってとこがまた笑えます(笑)。

どこもかしこも犬に拘った一冊。YA向けだから成人には少し物足りなさも感じるかもしれませんが、
私はかなりツボにはまりました。個人的には非常に気に入った一作。このレーベルにしてはヒット
なのでは?
犬好きさんには是非ともおススメしたい一冊であります。