ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

湊かなえ/「贖罪」/東京創元社刊

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湊かなえさんの「贖罪」。

取り柄と言えるのはきれいな空気、夕方六時には「グリーンスリーブス」のメロディ。そんな
穏やかな田舎町で起きた、惨たらしい美少女殺害事件。犯人と目される男の顔をどうしても思い出
せない4人の少女たちに投げつけられた激情の言葉が、彼女たちの運命を大きく狂わせることになる
──(あらすじ抜粋)。


全部書き終えて投稿しようとした記事が全部消えてしまいました・・・(涙)。ああ、また
やっちまったよ・・・なんで、こう懲りないんだろうか、私は・・・落ち込み中。

という訳であらすじももう一度考える気力がないので抜粋で失礼します・・・。
あーん、何書いてたか思い出せないよぅ・・・。はぁ。

湊さんの三作目はミステリフロンティア。可愛らしいベリー類が描かれた表紙とは反対に、
中身は相変わらずのノワールテイストてんこ盛りで、黒い、黒い。最初、連作だと気付かないで
読んでたので一作目読み終えた時点で腑に落ちない部分がいっぱいあって、何度も前に戻って
読みなおしてしまった。二作目の主人公が誰かわかった時点で構成に気付いて、読み進めて
やっと一作目の疑問点が腑に落ちました。

相変わらずリーダビリティは素晴らしいので一気に読めるし、構成力もあるし、面白かったの
ですが、前二作とキャラ造形や作中から感じる『厭な空気感』みたいなものは似通っていて、
正直少々食傷気味にはなりました。『告白』のような突き抜けた衝撃のある作品でないと、今後
は徐々に読者に飽きられて行くかもしれない。

被害者の母親が少女たちに投げつけた言葉の爆弾。それはあまりにも非常識でリアリティが感じ
られなかった。子供相手に、ただ犯人の顔を覚えてなかったからといって、あんな言葉を告げる
なんて。確かに、母親視点の章を読むと、彼女が母親になってもお嬢様気分の抜けない常識はずれ
な人間であることはわかるのだけど。それにしたって、子供に向けて言っていい言葉と悪い言葉
位区別しろよ、と言いたくなりました。相変わらず、嫌な人間を描くのがお上手です。彼女が
投げつけた呪いの言葉は、それぞれの少女の心にくすぶり続け、15年の歳月を経てその運命を
狂わせる。正直、4人全員が○○に手を染めるというのはあまりにも都合主義的すぎるだろうとも
思うのですが、この人の黒さならこれ位は当然なんでしょう。4人それぞれに、これでもかって
位、気が滅入るような運命が待ち受けていて、読んでいてどんよりしてしまいました。登場人物
も嫌な人間ばかりでねぇ。そもそも、4人の少女たちの親からして、自分の娘に対して厳しい人間
ばかり。殺人事件を目撃した娘たちの心のケアなんか全然考えていないんだもの。もっと自分の
子供を大切にしろよ、と言いたくなりました。

面白かったのは確かなのですが、人物関係をリンクさせるあまりに、ご都合主義に感じてしまう点
は前作『少女』に通じるものがあるな、と思いました。ミステリとしては面白いのでしょうけど、
あまりにやりすぎるとリアリティのなさに繋がってしまうと思う。リアリティのなさという点に
関しては他でもちょこちょこ感じたのですが。まぁ、この作者にリアリティは求めちゃいけない
って気はする。やりすぎた『黒さ』が売りなんだろうし。ただ、一話目のフランス人形見学ツアー
の部分はすごく引っ掛かりました。だって、田舎の町の各家にフランス人形が置いてあるという
状況はどう考えてもリアリティがない。そういう設定にするならば、なぜ各家庭にフランス人形が
置いてあるのかまできちんと書いて欲しかった。作中では、二昔くらい前に建てられた木造日本家屋
には応接間があり、必ずそこにはシャンデリアとフランス人形が飾ってあるとしか書かれていません。
なぜ応接間がついてる日本家屋が複数存在するのか?なぜそこにフランス人形が置いてあるのか?
その部分がはっきり明記されていないので、フランス人形がどの家庭にも置いてあるという設定自体
がどうしても受け入れられなかった。そんな部分に引っ掛かるのは私くらいかもしれませんが^^;

すべての原因となる少女殺害事件も含め、それぞれの話が黒さ爆発なだけに、エピローグは完全に
蛇足だと思いました。黒さが売りなんだから、とってつけたような中途半端な救いなんかなくて
いいのに。突然そこだけ戯曲調なのも不自然に感じたし。なんだかこれを入れたばかりに、微妙な
読後感になってしまった気がする。
エピローグと麻子の独白の章だけではタイトルの『贖罪』を描き切っているようには感じられ
なかったです。

まぁ、文句は多くなりましたが、面白かったんですよ。少なくとも、ミステリフロンティアの中
では十分読み応えのある一冊と言って差し支えないと思います。ただ、書かれた三作、どれも
似たような作風なので、今後はもう少し違うテイストの作品も読んでみたいかも。筆力は十分
あると思うので、いろんな方向性を試して欲しい気がします。底意地の悪さを感じる(苦笑)
この黒さは変わらないでほしいですけどね。
なんか、最初の記事と全然違うこと書いた気がするなぁ。あーあ・・・。