ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

加藤実秋/「チャンネルファンタズモ」/徳間書店刊

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加藤実秋さんの「チャンネルファンタズモ」。

敏腕ディレクターで名を馳せた深見百太郎は、理由あって大手の帝都テレビを退職し、職探しに
あけくれた挙句辿りついたのは何の因果かオカルト専門のケーブル局『チャンネルファンタズモ』。
元ヤンキーで霊感ゼロの構成作家・萩原ミサと霊能猫の黒ネコ・ヤマトと供に幽霊スポットを取材
することになるのだが、その先々でトラブルに巻き込まれる羽目に――小ネタ満載の、笑える
オカルトコメディ連作集。


加藤さんの新刊。快調に新作を発表されてますねぇ。ホラー・オカルト専門のテレビ局で働く
ことになった敏腕ディレクター百太郎(ひゃくたろうと読みたいところですが、ももたろうです)
が取材先で出会った謎を解決するどたばたコメディ。加藤さんって、一体いくつなんでしょう。
なんだか、ちょこちょこ出てくる小ネタがいちいちオヤジ臭い気がするんですが・・・^^;
まぁ、主人公が中年男性だし、相棒も三十代前半って設定なので、狙っているのでしょうけども。
若い子が読んでピンとくるのかな、と思わないでもなかったです。小ネタ満載で軽めに読める
ミステリという体裁は『モップガール』と似てるかな。ギャグはかなり脱力系ですが^^;
各作品のミステリ部分に関してはことごとく先が読めてしまい、ミステリとしての驚きはほとんど
ありません。できればストーリーにもうひとひねりあったらもっと良かったと思うのですが、
この作品はミステリ部分よりはちりばめられた小ネタや登場人物たちの軽妙なかけあいを愉しむ
作品なのかな、という感じがしました。それで十分楽しく読めましたしね。くすりと笑える場面が
いっぱいありました。冒頭の黒ネコのヤマトのネーミングからしてぷぷって感じだし。ただ、
トイレの花子さんUMAの正体を探る各短編の裏で、少しづつ百太郎が過去に追っていた事件も
真相が見え始め、それがラストの作品に繋がって行くところはきちんと連作短編らしい構成に
なっています。ラストの話はなかなかに読ませてくれましたし、ラストシーンもなかなかに
爽快。文句言いつつ『チャンネルファンタズモ』のカラーに染まってしまっている百太郎に
ほほえましい気持ちになりました。きっとこれからも彼らは切れない縁で繋がって行くのでは
ないかなぁ。百太郎が嫌だと思っても(苦笑)。

作中にちょこちょこ出て来るパクリネタがいちいち笑えます。
『突撃!隣の超常現象]』『ズバリ写ってるわよ!心霊写真なんでも鑑定団』『きょうふの料理』
『このミステリースポットがすごい!2009年度版』『ヤバネットはかば』etc...。
作者がこういうの考え付いてはにやにやしてたのが目に見えるようです(笑)。

チャンネルファンタズモのAD、22歳には見えない若者・谷中のキャラも面白かったですね。変な
文字(『通勤電車で金縛り』とか『新婚旅行で恐山』とか・・・どこで調達してくるんだ^^;←いや、
ひょっとして自作か?)がプリントされた服をいつも着ていて、かなり怪しい。でも、なんか
憎めないキャラでした。身近にいたらキモいだけのような気もするけど^^;;

そういえば二作目の『ジョニーの涙』に出て来た幽霊の声が録音されたレコード、小学生のころに
流行ったことを思い出しました。レベッカの『MOON』オフコースの『YES,YES,YES』、極めつけが
岩崎博美の『万華鏡』・・・うぉっ、今こうして書いてるだけで怖くなってきた・・・ひえぇ^^;;
ほんとに、すんごい怖い声なんですよね・・・今のCDとかにも入ってるのかな、あの声・・・。
どれもとってもいい曲なんですけどね。いまだに聴くのは怖いなぁ^^;;


小ネタ満載で楽しく読める連作ミステリでした。軽めのミステリを読みたい時におススメです。