ミステリ読書録

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桜庭一樹/「桜庭一樹日記 BLACK AND WHITE 」/富士見書房刊

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桜庭一樹さんの「桜庭一樹日記 BLACK AND WHITE」。

オフィシャルWEBサイト上に書かれた日記と書き下ろしコラムをまとめ、単行本化。直木賞受賞
以前、ラノベ作家時代の本音と生活が垣間見える貴重な日記集。


まだ、桜庭さんがラノベ作家」と言われていた頃に書かれたWEB日記を一冊にまとめたもの。
ご自身でも挨拶の時にラノベ作家の桜庭一樹です」などと言っていて、そういえば、桜庭
さんって自他共に認めるラノベ作家だったんだよなぁ、としみじみ感慨にふけってしまった。
といっても、私が桜庭作品に初めて出会ったのはミステリフロンティアの「少女には向かない職業
だったから、ラノベ作家という認識はまったくなかったのだけれど。
でも、本書を読むと、ラノベで地道に名前を売っていたからこそ、現在の桜庭さんがある
のだなぁということがよくわかる。そして、その頃からのファンは、今の人気作家ぶりを
どう思っているのかなぁとちょっと考えてしまった。この日記が書かれた当初はまだブレイク
前で、『GOSICK』で少し名が売れて来たくらいの状態で、ファンの数もそんなに今程多く
なかっただろうから、もらったファンレターのすべてに返事を書かれていたようです。しかも、
ちゃんと一通一通相手の手紙を読んだ上で直筆で。桜庭さんが、当時からとってもファンを大事に
していたことが伝わってきました。今は人気作家になってしまって、ファンレターの数も半端じゃ
ないでしょうから、その頃のような対応はとても無理でしょうけど。その頃手紙をもらった人は
人気が出て喜ぶ半面、寂しい気持ちになったりしてるんじゃないのかな。しかも、もうラノベ
書かなくなってしまっているのだし。本当にこんなにラノベを愛していた人が、ラノベを卒業
しちゃったんでしょうか。この日記を読んでいると、ちょっと考えられないけど。ラノベ時代からの
ファンはやっぱり複雑なんじゃないのかなぁ・・・。

以前に読んだ『桜庭一樹読書日記』とは違って、こちらは本当に日々の日常を綴った普通の日記が
ほとんど。あの膨大な読書量はこの頃から健在だったのだろうけど、あまりそのことは出て
きません。毎日一冊か二冊寝る前に本を読む、とはさらっと書いてありましたけど。本のことが
出て来ないので、日記の内容もごくごくフツー。でも、自分のことを『俺』と言ったり、美形
を敵対視(特にキムタク!)したり(ヨン様も『ヨン』呼ばわり)、サンボマスターへの愛を熱く
語ったりと、楽しい人柄が随所で伺えて、『読書日記』よりも桜庭さんのことが身近に感じられ
ました。初めてのサイン会で、ドキドキしすぎてファンから逆に励まされたエピソードも微笑ましい。
なんだか、とっても可愛らしい人だなぁって感じです。それは今までの日記や、テレビ番組の
インタビューなんかからでも感じていたのですけれどね。

あと、桜庭さんが通っている空手道場のエピソードがたくさん出て来て、ちょっと驚きました。
小柄なイメージに似合わず空手をやってらっしゃるのは知っていたのですが、作家活動をする傍ら、
週二回きちんと道場に通って稽古されていて、本当に空手家なんだなぁと思いました。道場の
仲間たちとのエピソードもちょこちょこ笑えました。

メジャー作家になった現在からは伺い知れない、当時の地道な作家活動や日常の出来事が赤裸々に
綴られていて、今となっては貴重な記録なのではないかと思いました。